研究実績の概要 |
2017年1月から2018年12月までの約2年間で当院SCUに入院加療を行った急性期脳血管障害800症例を登録した。中間解析として2017年1月から2018年9月までにSCUに入院した急性期脳梗塞患者474例のAKIの発症頻度・院内転帰、再灌流療法、尿中バイオマーカーであるL-FABPとの関連について検討を行った。474例の急性期脳梗塞患者のうち、27例 (5.7%) がAKIを発症した。尿中L-FABP値はAKIで有意に高値であった(29.5μg/g Cr vs. 3.8μg/g Cr, P<0.001)。AKI発症頻度はlow(L-FABP>10μg/g Cr):1.1%,intermediate (10≦L-FABP<20μg/g Cr):7.5%, high (L-FABP≧20μg/g Cr):27.5%であり、AKIを予測する尿中L-FABPのカットオフ値は12.9 μg/g Cr(感度 85.2%、特異度 82.1%)であった。多変量解析ではintermediate(OR, 5.249, P=0.041)とhigh(OR, 21.921,P<0.001)で尿中L-FABP値はAKI発症の独立因子であった。またAKIは退院時転帰不良の独立因子であった(OR, 3.978,P=0.012)。また再灌流療法実施症例でAKIの頻度が有意に上昇することはなかった。上記解析から尿中L-FABPは急性期脳梗塞患者のAKI発症を予測する有用なバイオマーカーであると考えられる。 この研究内容は2019年5月の大阪で行われる第60回日本神経学会学術総会で演題採択され英文原著論文を2編作成し現在国際学術誌に投稿中である。症例登録は終了しているが追加解析が必要であり研究期間の1年延長を申請した。
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