研究実績の概要 |
我が国は急速に高齢者社会が進行しており,高齢者の救急搬送数も年間300 万件を超えようとしている.高齢者は免疫力が低下し,若年者より感染が重篤化しやすい特徴がある.しかし訴えが明瞭でなく,敗血症を併発してもβブ ロッカーやステロイドを服用で頻脈とならず,発熱を認めないなど身体所見に乏しく,重篤感が認められず見逃されやすい.より効率的な細菌感染の重症度判定法が望まれる.研究目的は, 感染症疑いで救急搬送される高齢者に対して,既存の感染症マーカー以外の種々のマーカー(プレセプシン,キマ ーゼ)を測定することで,新たな感染症マーカーの開発を行うことである. SIRSの診断基準を満たす重症感染症を疑う救急車で搬送された高齢者症例(65歳以上)を対象に、救急外来でAPACHIIスコアを記録し採血を行った。既存の感染重症度マーカーであるCRPとプロカルシトニン(PCT)、およびP-SEPについて、血培結果(陽性(+) vs.陰性(-))で比較検討した。症例数は51例(男:女=30:21)。年齢は75±9.7歳。血倍+/-=19/32例。CRP値(mg/dl):15.1±2.6(血培+) vs. 11.2±2.0(血培-)(p=0.24), PCT値(ng/ml);39.9±12.2(血培+) vs. 5.9±9.5(血培-)(p=0.03), P-SEP値(pg/ml);854.8±109.8(血培+) vs. 463.9±83.9(血培-)(p=0.006)であった。血培結果を目的変数、P-SEP、PCT、CRPを説明変数とした多変量解析では、P-SEPで関係があった(p=0.04)。APACHⅡスコアとの相関係数はP-SEP:0.34 > CRP:0.281 > PCT:0.119 であった。救急外来における高齢者の重症細菌感染症の判別法としてP-SEPの有用性が示された。
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