顎口腔領域では様々な疾患により形態や機能を維持ならびに支持する骨が喪失される。骨喪失に伴い口腔機能である咀嚼・嚥下・発語などの低下を招き、QOLに大きな影響を与える。疾患を除去した後の骨形態による回復が重要な課題である。平成28年度の研究計画は骨代謝環境下における骨細胞の役割とその意義であった。骨細胞を組織化学的に観察すると神経系ネットワークのような無数の手を伸ばし、お互い連絡しているようである。また、骨代謝環境下では骨芽細胞や破骨細胞よりも骨細胞の数が多いが、未だその役割は未知な部分が多い。無数にある骨細胞には重要な役割が存在する可能性が示唆されるため、骨細胞に着目した研究には意義がある。骨細胞が骨再生にどのような役割があり、またどれほど重要なポジションにあるかを検索中である。骨代謝は3種の細胞、すなわち、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞が関与し、また、お互いが複雑なネットワークを持ち、それらの相互関係により成り立っている。骨再生のメカニズムを検索するには実際の生体モデル、例えばラットなどで行うことが重要である。神経系ネットワークのようなものが骨細胞間にもあると考えると、骨再生には神経伝達物質が関与している可能性が十分に示唆される。そのため、実験動物に数種類の神経伝達物質を浸漬させたボーンジェクトを骨欠損部に充填し、骨再生速度や周囲骨細胞の挙上をみることで、骨代謝における骨細胞の役割を検索でき、現在施行中である。
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