自己免疫性唾液腺はドライマウスを引き起こす主たる原因であるが、その発症の分子機構はいまだ不明点が多く、疾患特異的な 治療法は開発されていない。細胞間接着分子は隣接する細胞、あるいは細胞外基質との接着を介して、生体の恒常性を保つ重要な役割を担っている。また、細胞間接着分子の発現異常が本疾患発症に関与していることが示唆されている。本研究では、唾液腺の発生・維持における細胞間接着分子の機能を分子レベルで明らかにすることを目的としている。 前年度の観察より、ネクチン1欠損マウスでは顎下腺において形態異常が確認され、消化酵素であるアミラーゼの発現が減少していることが確認された。ネクチン1欠損マウスではネクチン1だけでなく、ネクチン3のシグナルの発現も消失しており、ネクチン1、3が顎下腺の形態形成に関与していることが示唆された。唾液腺の発生・維持にはFGF、TNF、EGF、HGFなどのシグナル分子の関与が報告されている。ネクチンがPRLRと相互作用し、PRLRシグナル伝達を促進することを見出し、同様にFGFR1にも相互作用があることが見出されている。FGFは唾液線の発生・維持に寄与することがすでに報告されており、FGFRのシグナル伝達経路の活性制御にネクチンー1が関与する可能性が十分に考えられ、唾液腺発生時におけるネクチン1の分子機能をFGF受容体を介したシグナル伝達に特に注目して解析を行なったが、欠損マウスの個体数が少なく、予定通りの解析を行うことができなかった。
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