研究実績の概要 |
未分化間葉系細胞は骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、筋芽細胞等への多分化能を持つユニークな細胞である。それぞれの細胞への分化過程に必要な転写因子は既に同定されており、軟骨細胞分化にはSox9が必須であることが示されている。Sox9転写因子の発現パターンや機能解析の研究は近年目覚ましく進展を遂げているが、Sox9転写因子の上流でその発現を制御する因子については不明であり、シグナル伝達経路も明らかにされていない。 そこで、Sox9の上流に存在する転写因子を同定し軟骨細胞分化のさらなる理解を深めるため、クロマチンに結合するタンパク質を同定するための有用なツール(enChIP法)を用いて、Sox9のプロモーター状に結合するタンパク質をショットガンMS解析法により探索を行った。その結果、Transcriotion factor induced by Sox9 (Tfis)をいくつか同定し、その内の一つであるTfis1, Tfis2遺伝子の2つに着目した。そこで、この2つの因子がSox9誘導能を持つか否かを検討するために、未分化間葉系細胞株であるC3H10T1/2細胞にTfis1, Tfis2遺伝子導入を行い、RT-qPCR法にてSox9遺伝子の定量を行った。その結果、両方の転写因子共にSox9誘導能を持ち、さらにChIP法にてTfis1, Tfis2タンパク質はSox9プロモーター状に結合していることを確認した。 さらに、エレクトロポレーションを利用したTAKE法によりマウス前核期受精卵に対して、Tfis1, Tfis2遺伝子の開始コドンを含むエキソン上に終始コドンを含むオリゴDNAを挿入した。その後生まれてきたマウスの遺伝子型を判定し、目的の変異遺伝子改変マウス(F0)を作出することに成功した。現在、コロニーの安定化と個体レベルの表現系の解析を行っている最中である。
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