研究課題/領域番号 |
16K20421
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
溝上 顕子 九州大学, 歯学研究院, 講師 (70722487)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オステオカルシン / インクレチン / グルカゴン |
研究実績の概要 |
本年度の成果は、オステオカルシン(OC)によるグルカゴン→GLP-1変換現象を明確化したことである。 OCを継続して投与したマウスでは非投与マウスに比べて、膵ランゲルハンス島面積の増大と抗GLP-1抗体陽性細胞数の増加を認めた。また、マウスより単離したランゲルハンス島をOC添加培地で培養すると非添加培地での培養時と比較して、インクレチン(GLP-1)を発現する細胞が増加し、プロセシング酵素であるPC1/3の発現が上昇していた。 一方、GLP-1受容体欠損マウス(GLP-1R KO)にOCを長期間投与しても野生型で見られたOCによる代謝改善は認められず、むしろ耐糖能は悪化することを明らかにした。両遺伝子型のマウスで、インスリン負荷試験によるインスリン感受性に変化は見られなかったが、グルコース負荷時のインスリン分泌がGLP-1R KOのOC投与群で低下しており、耐糖能の悪化はこれに起因するものと考えられた。 単離したランゲルハンス島を用いてグルコース刺激インスリン分泌実験を行ったところ、野生型ではOC添加培地で培養したラ氏島でインスリン分泌が増強したが、GLP-1R KO由来のものはOC添加によって低下した。また、GLP-1R KO由来のラ氏島をOC刺激してもグルカゴン→GLP-1変換現象は、起こらないことを示唆するデータも得た。 以上のことから、経口投与したGluOCは消化管からのGLP-1の分泌およびラ氏島におけるGLP-1産生を介して代謝改善効果を発揮している可能性が高いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果は本研究における仮定を肯定するものであり、順調に進展していると言える。グルカゴン→GLP-1変換現象が明確化し、その過程にGLP-1シグナルが関わっている可能性が高いことは明らかになったが、その詳細な分子メカニズムは明らかにできていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きグルカゴン→GLP-1変換現象に関して、単離ラ氏島およびマウス個体を用いて実験を行う。特にOC刺激後のプロセシング酵素の変化について、細胞(単離ラ氏島)レベルで解析を行うと同時に、個体レベルでOC投与後の消化管および膵ランゲルハンス島におけるプロセシング酵素の変化を解析する。また、SGLT2阻害薬による高グルカゴン血症に対するGluOCの効果も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今まで各種ホルモンの測定に高額なELISAキットを使用していたが、本年度より半額以下のコストで済むシステムに変更したため、かなり支出を抑えることができた。 また、ランゲルハンス島の単離の技術習得にやや時間がかかり、先に動物個体の解析を行ったため、ランゲルハンス島を用いた実験に使う物品の一部をまだ購入していない。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の早いうちにランゲルハンス島を用いた実験に使う各種ホルモン測定キットおよび各種抗体を購入するほかは当初の予定通りに使用する。
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