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2016 年度 実施状況報告書

Sp7による骨の血管新生制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K20422
研究機関長崎大学

研究代表者

小守 寿人  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 特任研究員 (80770411)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード骨芽細胞 / Sp7
研究実績の概要

Sp7は、3つのZnフィンガーを持ち、SPファミリーに相同性を持つ転写因子である。Sp7 ノックアウト(ko) マウスでは、骨芽細胞の形質を獲得する以前に分化がブロックされて、骨形成が全く起こらない。Sp7 koマウスにはRunx2の発現が見られるが、Runx2 koマウスにはSp7の発現は認められず、Sp7はRunx2の下流にあると考えられる。実際、Sp7はRunx2によって発現誘導される。すなわち、Sp7はRunx2の下流にあり、Runx2とともに骨芽細胞分化に必須な転写因子である。
我々は、Sp7の骨芽細胞での機能を明らかにするために、2.3 kb Col1a1プロモーターを用いて、骨芽細胞特異的Sp7 ランスジェニック(tg)マウスを作製した。Sp7 tgマウスでは、骨芽細胞の成熟が阻害され、骨量の減少が認められた。面白いことに、Sp7 tgマウスでは、皮質骨の組織切片において、多くの血管が観察された。これは、抗CD34抗体を用いた免疫組織染色で血管内皮を描出させることで確認した。皮質骨内の血管の増加は、透過電顕像、走査電顕像でも観察された。
Sp7が骨での生理的な血管新生に関与するか調べるために、Sp7fl/flマウスを用い、骨芽細胞特異的Sp7 koマウスを作製することにした。まず、2.3kb Col1a1プロモーターCre tgマウスの作製に着手し、Cre発現レベル及び発現細胞をGFPで特定できるように、green fluorescent protein (GFP)-Creの融合蛋白質を高発現する(GFP-Cre)マウスを作製した。このマウスが骨芽細胞特異的に発現することを、凍結切片でGFPを観察することにより確認した。次に、2.3kb Col1a1プロモーターGFP-Cre tgマウスをSp7fl/flマウスと交配し、Sp7fl/fl GFP-Creマウスを作製した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

骨芽細胞特異的Sp7 koマウスはすでに報告されているが、骨芽細胞の成熟障害による骨量減少のみが報告されており、血管に関しては言及されていない。2.3kb Col1a1プロモーターCre tgマウスでのCreの発現レベルが影響している可能性もあるため、独自に2.3kb Col1a1プロモーターGFP-Cre tgマウスを作製することにした。GFPを強発現するF0マウスを選択し、系統を樹立したが、最初に樹立した系統では、骨芽細胞に加えて精子にも発現し、Sp7fl/fl マウスと交配後、germline koマウスとなったため、Creマウスとして使用できなかった。次に樹立した系統では、骨芽細胞特異的に発現したが、littermate間でGFPの発現レベルが一定せず、トランスジーンが複数挿入されていると考えられた。そのため継代を繰り返す必要があり、一定した発現が得られる系統の樹立に時間がかかった。

今後の研究の推進方策

1. 東陽テクニカのSkyScan 1272(最高分解能350nm)を用い、野生型マウス、Sp7 トランスジェニック(tg)マウスおよびSp7fl/flGFP-Creマウスの大腿骨骨幹部で、30マイクロm以下の管腔を描出し、その体積を定量、比較する。また、同じ大腿骨を用いて、リガクのマイクロCTを用いて、海綿骨量および皮質骨厚等を測定する。
2. パラホルムアルデヒド固定した野生型マウスの大腿骨パラフィン切片を用いて、抗Sp7抗体(核に染色)と抗Vegfa抗体(細胞質に染色)で、2重免疫組織染色を行う。これにより、Sp7発現細胞とVegfa発現細胞が一致するか明らかにする。
3. 野生型マウスおよびSp7fl/flGFP-Creマウスから骨芽細胞分画を採取、mRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRでVegfaおよび骨芽細胞分化マーカー遺伝子(Runx2, Sp7, Col1a1, Spp1, Bglap)発現を比較する。また、骨芽細胞分画より蛋白を抽出、Western blot法でVegfa蛋白を比較する。
4. GFP-CreマウスおよびSp7fl/flGFP-Creマウスの大腿骨より凍結切片を作製する。抗Vegf抗体で反応後、蛍光ラベル(赤色)した二次抗体を反応させる。Sp7fl/flGFP-Creマウスで、GFP陽性骨芽細胞(Sp7が欠失した骨芽細胞)でVegfa蛋白が減少するか検討する。GFP-Creマウスをコントロールとして用いる。これにより細胞レベルで、Vegfa 発現にSp7が必要か明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

骨芽細胞特異的に一定した発現が得られる2.3kb Col1a1プロモーターGFP-Cre tgマウスの系統の樹立に時間がかかったため、Sp7fl/fl GFP-Creマウスの作製が遅れた。そのため、Sp7fl/fl GFP-Creマウスの解析に使用する予定の研究費が翌年度に繰越となった。

次年度使用額の使用計画

SP7発現とVegfaの発現の相関を見るために、抗Sp7抗体と抗Vegfa抗体を用いた免疫組織染色を行う(抗体や試薬の購入)。Sp7fl/flGFP-Creマウスから骨芽細胞分画を採取、リアルタイムRT-PCRでVegfaおよび骨芽細胞分化マーカー遺伝子発現を比較する(カスタムオリゴ、RNA抽出試薬、RNA精製キット、逆転写酵素、リアルタイムRT-PCR関連試薬の購入)。また、Western blot法でVegfa蛋白を比較する(Western blot関連試薬の購入)。GFP-CreマウスおよびSp7fl/flGFP-Creマウスの組織解析(組織解析用試薬の購入)。Vegfaプロモーター領域を用いたレポーターアッセイを行う(制限酵素類、ルシフェラーゼアッセイ試薬)。抗Sp7抗体でChIPアッセイを行う(ChIP用試薬及び抗体の購入)。また、繁殖用マウスの購入及びマウスの維持費に用いる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Cbfb2 isoform dominates more potent Cbfb1 and is required for skeletal development.2016

    • 著者名/発表者名
      Jiang Q, Qin X, Kawane T, Komori H, Matsuo Y, Taniuchi I, Ito K, Izumi S, Komori T
    • 雑誌名

      J Bone Miner Res

      巻: 31 ページ: 1391-1404

    • DOI

      10.1002/jbmr.2814

    • 査読あり
  • [学会発表] Cbfb1とCbfb2 アイソフォームは骨格形成過程において重要な役割を果たす2016

    • 著者名/発表者名
      姜晴,秦昕,小守寿人,松尾友紀,宮崎敏博,森石武史,小守壽文
    • 学会等名
      第58回歯科基礎医学会学術大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道・札幌市)
    • 年月日
      2016-08-24 – 2016-08-26
  • [備考] 骨における血管新生機構の解明

    • URL

      http://www.de.nagasaki-u.ac.jp/dokuji/kaibou-2/index.html

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公開日: 2018-01-16  

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