研究課題/領域番号 |
16K20423
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
松原 琢磨 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00423137)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
チロシンキナーゼc-Srcは破骨細胞の分化や生存ではなく、骨吸収に必須の分子であり、その作用メカニズムを解明することは破骨細胞による骨吸収の分子基盤を解明できると考えられる。我々は、c-Src欠損マウス由来線維芽細胞に恒常活性型c-Srcを過剰発現させ、c-Srcと結合する分子を質量分析により探索した結果、アクチンの重合に関与する新規分子Protein Phosphatase1, regulatory subunit 18 (PPP1r18)を同定した。本研究では機能的に未知であるPPP1r18の破骨細胞における機能を検討している。まず、PPP1r18の破骨細胞における発現を検討した結果、PPP1r18は発現しており、破骨細胞の骨吸収機能に密接に関与する細胞骨格構造アクチンリングにc-Srcとともに局在していた。また、免疫沈降法の結果、破骨細胞においてPPP1r18はc-Srcと結合していた。さらに、PPP1r18はアクチンリングを形成できないc-Src遺伝子欠損マウスの破骨細胞において細胞質全体に局在していたが、c-Src遺伝子の導入によりアクチンリング形成を誘導すると、PPP1r18はアクチンリングに局在を認めた。以上の結果より、PPP1r18はc-Srcによる破骨細胞のアクチンリング形成に関与することが示唆された。次に、破骨細胞に過剰発現した結果、PPP1r18によりアクチンリング形成が阻害された。この結果よりPPP1r18はアクチンリング形成を負に制御する可能性が示唆されたが、そのメカニズムは不明である。PPP1r18はアクチン以外にProtein phosphatase 1 (PP1)と結合することが明らかとされている。そこで現在、PPP1r18のPP1結合部位を変異させた遺伝子を作成中であり、この変異体を使用してPPP1r18の機能を解析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroにおけるPPP1r18の破骨細胞における発現および局在の検討に関しては予定通り進んでいる。さらに、破骨細胞におけるc-SrcとPPP1r18の分子的な相互関係に関しても予定通り解析を行った。破骨細胞におけるPPP1r18の役割に関してはアデノウイルスの作成および過剰発現を行い、当初の予定通りアクチンリング形成および骨吸収活性に関しての役割を検討した。本年度ではin vitroにおける実験に関しては特に予定通りに進行した。 しかしながら、予算的な問題があり遺伝子改変マウスの作成には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroの解析においては問題なく進んでいるので本年度では変異型のPPP1r18の作成およびその機能解析を行う。また、既知のc-Srcとの関連タンパク質Cortactinやp130Casなどとの分子的な相互関係を検討する。これにより、新規分子PPP1r18の破骨細胞における役割が明らかになり、破骨細胞の骨吸収活性制御メカニズムの一端が明らかになると考えられる。 マウス作成に関しては近年技術が向上してきたゲノム編集を使いマウス作成法を考えるが、予算的にマウス作成までは難しいと考えられる。
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