研究実績の概要 |
チロシンキナーゼc-Srcは破骨細胞の分化や生存ではなく、骨吸収に必須の分子であり、その作用メカニズムを解明することは破骨細胞による骨吸収の分子基盤を解明できると考えられる。我々は、c-Src欠損マウス由来線維芽細胞に恒常活性型c-Srcを過剰発現させ、c-Srcと結合する分子を質量分析により探索した結果、アクチンの重合に関与する分子Protein Phosphatase1, regulatory subunit 18 (PPP1r18)を同定した。本研究では機能的に未知であるPPP1r18の破骨細胞における機能を検討した。まず、PPP1r18の破骨細胞における発現を検討した結果、PPP1r18は発現しており、破骨細胞の骨吸収機能に密接に関与する細胞骨格構造アクチンリングにc-Srcとともに局在していた。さらに、PPP1r18はアクチンリングを形成できないc-Src遺伝子欠損マウスの破骨細胞において細胞質全体に局在していたが、c-Src遺伝子の導入によりアクチンリング形成を誘導すると、PPP1r18はアクチンリングに局在を認めた。次に、破骨細胞に過剰発現した結果、PPP1r18によりアクチンリング形成が阻害された。また、PPP1r18のProtein phosphatase 1 (PP1)結合部位を変異させた変異体を破骨細胞に過剰発現してもPPP1r18の野生型と違いアクチンリング形成を抑制しなかった。さらに、PPP1r18のアクチンリング制御メカニズムを検討した結果、Srcの17番目のセリンリン酸化を制御し、局在を変化させることによりアクチンリング形成を制御することを示唆する結果を得た。これらの結果より、PPP1r18はPP1リクルートによるSrc局在制御により破骨細胞の骨吸収能を制御していると考えられた。
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