研究課題/領域番号 |
16K20425
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
佐藤 寿哉 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (30709241)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 血流動態 / 唾液分泌 / 副交感神経 |
研究実績の概要 |
本研究計画は唾液分泌と唾液腺血流動態の関係という新たな角度で唾液分泌障害機序を解明し治療への応用を目指しており、本年度(平成28年度)は唾液腺で生じる副交感神経性血流増加反応と唾液分泌量の同時測定を試みた。実験には10-15週齢のWistar系雄性ラットを用いた。ラットはウレタン麻酔して筋弛緩剤で非動化した後、人工呼吸器を用いて管理した。体幹血圧は大腿動脈に挿入したカニューレを介して観血的に記録し、諸種の薬物は大腿静脈に挿入したカテーテルから投与した。唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)の血流動態はレーザースペックルイメージング血流計を用い継時的に測定・記録した。唾液腺の血流増加反応は三叉神経の求心性刺激(舌神経刺激)により誘発させた。本方法は脳幹の諸核を介して反射性に副交感神経線維のみを活性化させる方法であり、従来の直接的な神経刺激法では困難であった副交感神経線維の単独作用を生理的条件下で観察することを可能とする本研究室において独自に開発・確立された方法である。また各唾液腺の導管に挿入されたカテーテルから安静時および舌神経刺激時に分泌された唾液を回収し唾液分泌量を測定した。 その結果、顎下腺では刺激強度に依存した血流増加反応と唾液分泌が認められたが、耳下腺では血流増加反応は認められたものの唾液分泌はごく僅かだった。また舌下腺においても刺激強度に依存した血流増加反応が認められたが分泌される唾液の粘稠度が非常に高くカテーテルを通しての回収は出来なかった。これにより舌下腺を除く大唾液腺において舌神経刺激で誘発される副交感神経性血流増加反応とそれに伴う唾液分泌量を同時に測定することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(平成28年度)は概ね研究計画に沿った内容の研究が遂行された。当初の研究計画では流量計を用いて秒単位の経時的な唾液分泌を測定・記録することを目指していたが、ラットの唾液分泌速度は最大でも流量計の検出限度以下だったため評価方法を変更した。また舌下腺から分泌される唾液を単独で回収することが難しいことから口腔内の舌下小丘部からカテーテルを挿入し顎下腺と舌下腺由来の混合唾液を回収することを新たに実験手技に加える。いくつかの変更点が生じているが研究目標の達成を困難にするものではない。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は研究計画に沿って唾液腺の副交感神経性血流増加反応と唾液分泌との関係性を明らかにすることを目指し、各種アンタゴニストの投与により唾液腺血流増加反応が抑制された場合の唾液分泌量を測定し、唾液腺血流動態が唾液分泌に与える影響について検討する。またラット唾液腺におけるコリン作動性と非コリン作動性の血流増加反応が唾液分泌に果たす役割の違いについて各種アゴニスト・アンタゴニストを用いた実験を行い検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度への繰り越し金が生じたが執行率は96.9%であり概ね計画通りの使用額となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究計画で予定している支出に組み入れる。
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