研究課題
口腔領域を中心とする先天性疾患である鎖骨頭蓋異形成症(CCD)は非常に稀な疾患で未解明な点が多く更なる病態解明が治療法開発に必須である。一方、疾患特異的iPS細胞の樹立は病態解明、治療法の開発、薬剤の選択など大きな貢献が期待できる。本研究では、我々の開発した骨分化誘導技術を基にCCD由来iPS細胞の機能的評価を行い、病態との関連を解明すること、さらには遺伝子編集技術を応用し変異塩基を正常塩基に入れ替えた変異正常化iPS細胞を作製し臨床応用への道を開くことを目的とする。これまでにCCD4症例すべてに対しiPS細胞を作製し、さらに、ゲノム編集技術を用いてReversed-iPS細胞およびRUNX2 KO-iPS細胞を作製し、未分化性および多能性を確認した。これらのiPS細胞に対し骨分化誘導を行い、qPCRにて骨芽細胞分化マーカの発現を検討し、CCD-およびKO-iPS細胞での発現低下を認めた。また、ヌードラット頭蓋骨欠損部へ骨分化誘導後の細胞を移植し、組織学的解析によりCCD移植群で骨形成が著しく低下することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
4症例のCCDからiPS細胞作製に成功した。さらにゲノム編集技術により、RUNX2遺伝子変異を正常化したReversed-iPS細胞と、RUNX2 KO-iPS細胞を作製した。以前に開発した骨分化誘導方法を用いて機能解析を行い、CCD-iPS細胞がCCDの表現型を示す細胞であることを確認し、またKO-iPS細胞の骨芽細胞分化は著しく抑制されることをqPCRにより確認した。これによりヒトRUNX2+/+、+/-、-/-のiPS細胞を用いて、今後さらに詳細な機能解析を行うことが可能である。これまでのところ、透過型顕微鏡を用いた解析により、Reversed-iPS細胞由来の骨芽細胞が正常な核形態を示したのに対し、CCD-およびKO-iPS細胞の骨分化誘導後の細胞では核膜の異常陥入による分葉状の核を示すことを認めている。
核膜関連タンパク質の発現異常は様々な骨形成不全を引き起すことが報告されており、CCD-およびKO-iPS細胞の骨分化誘導後の細胞においても核膜関連タンパク質の発現に異常をきたしている可能性がある。今後はこれらの遺伝子発現をqPCRで検討し、RUNX2との関連についても詳細に検討していく予定である。
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