研究課題/領域番号 |
16K20431
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松田 光平 北海道大学, 大学病院, 医員 (10770563)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん / 腫瘍血管 / マーカー |
研究実績の概要 |
腫瘍血管新生阻害療法は,がんの兵糧攻めだけではなく血管の正常化による放射線療法や化学療法の奏功率改善も期待される.しかし,最近,血管新生阻害療法の長期間使用によるがんの悪性化・耐性の問題といった問題も報告されはじめ,腫瘍血管新生阻害療法には適切な時期があると考えられている.われわれはがん微小環境の違いにより血管内皮の性質が変わることを見出している.本申請では,患者・薬剤・時期を選択した上で実施する新しい個別化血管新生阻害療法の実現を目指すため,時空間的に変化する腫瘍血管内皮マーカーの発現解析を行うことを目的としている.本年度は腫瘍血管内皮 (tumor endothelial cell: TEC) マーカーが,これまでに同定されたマウスTECマーカーのうちbiglycanについてその発現とがん患者の臨床的因子との比較を行った.腫瘍血管内皮におけるbiglycanの発現は患者の予後不良と相関していることがわかった.さらに血中のbiglycanのレベルが他のTECマーカーのPTX3やSBSNのレベルとも相関することがわかり,複数のTECマーカー解析ががんの悪性度診断に応用できる可能性が示唆された.また,がん治療経過に伴う腫瘍血管内皮のTECマーカーの発現変動の有無について調べるために血管内皮細胞に抗がん剤を処理しTECマーカーのmRNA発現変動を解析した.biglycanやTECに発現亢進している幹細胞マーカーのいくつかが発現亢進することを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TECマーカーbiglycanがヒトにおいて腫瘍血管におけるレベルががんの悪性度に相関することを示唆する結果をえることができ,また,抗がん剤によりTECマーカーの発現が変動することも明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
がんの進展・治療経過におけるTECマーカーの経時的な発現変動を解析するために実験動物腫瘍モデルを用いて解析する.TECマーカーが腫瘍の大きさと浸潤,転移巣の有無や大きさなどでどのように変化しているかについてならびに原発巣と転移巣におけるTECマーカーの発現の差を解析する. また,抗VEGF療法や他のmulti-kinase inhibitorなどの血管新生阻害療法に伴うTECマーカー発現変動について,マウス腫瘍モデルを用いて解析する.TECマーカーの発現変動に伴うがん微小環境内の他の細胞動態についても組織学的・生化学的に解析を進め,TECの形質変化のメカニズムの解明にもつとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス腫瘍モデルをさらに活用するべく、vivoでの実験に生かす予定である、また、本年度は海外への学会発表、論文投稿予定もあるため、それらに用いる予定である。
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