研究課題/領域番号 |
16K20432
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐伯 歩 北海道大学, 歯学研究科, 助教 (70638345)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | S. sanguinis / IL-1α / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
本研究では、口腔連鎖球菌Streptococcus sanguinisがInterleukin-1α(IL-1α)の分泌を誘導する分子機構を明らかにし、本菌による感染性心内膜炎の病因論解明ならびに新規予防・治療法開発の一助とすることを目的とする。 S. sanguinisは、A/J マウス由来樹状細胞(XS-106細胞)ならびにC57BL/6(B6) より採取した骨髄由来マクロファージ (BMM) にIL-1αの産生を誘導したが、それらの活性はcaspase-1、NLRP3あるいはASCノックアウトマウス由来BMMで有意に減弱した。また、本活性はcalpain阻害剤であるMDL 28170により阻害されたが、caspase-1阻害剤であるz-YVAD-FMKでは阻害されなかった。さらに、Proximity ligation assayによりIL-1αとcaspase-1が細胞質で共局在することが観察された。 これらの結果から、S. sanguinisはBMMに対してIL-1α産生を誘導する活性を有し、その活性発現にはNLRP3インフラマソームが関与していることが示唆された。しかしながら、NLRP3インフラマソームの活性化で誘導されるcaspase-1のタンパク質分解活性が重要ではなく、caspase-1とIL-1αが細胞質で共局在していることが何か重要な役割を果たしているのではないかと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、S. sanguinisはXS-106細胞ならびにB6由来BMMに対してIL-1α産生を誘導する活性を有し、その活性発現にはNLRP3インフラマソームが関与していること、ならびにIL-1αとcaspase-1が細胞質で共局在していることが示唆され、学会発表を行った。今後より詳細なメカニズムを明らかにしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1. IL-1αの成熟におけるインフラマソームの関与を明らかにする。 XS-106細胞ならびにBMMを標的細胞とし、菌体刺激時にIL-1αが種々のNLRP(NLRP3の他に NLRP1, NLRC4)、AIM2ならびにASC、caspase-1ならびにIL-1βと複合体を形成しているかどうかを明らかにする。 1) 抗caspase-1抗体、抗IL-1β抗体、抗NLRP3抗体、抗ASC抗体、抗NLRP1抗体、抗NLRC4抗体あるいは抗AIM2抗体で免疫沈降し、抗IL-1α抗体で検出する。さらに免疫染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析する。 2. 菌体あるいは菌体成分が細胞質内に取り込まれることによる直接的な作用なのか、あるいは、菌体成分が細胞内に入ることを必要としない細胞表面の何らかのレセプターを介したエンドサイトーシス非依存的な作用であるのかを明らかにする。 1) 菌体成分がエンドサイトーシスやエンドソームの成熟により細胞質内に取り込まれることを必要とするのかを明らかにするため、XS-106細胞ならびにBMMを標的細胞とし、各種のエンドサイトーシス阻害剤を用いて、IL-1αの産生を調べる。 2) エンドソームから、菌体成分が細胞質に放出されるメカニズムを明らかにするため、XS-106細胞ならびにBMMにおいて、エンドソーム酸性化阻害剤(NH4Cl)、プロテアソーム阻害剤(MG-132、lactacystin)、カテプシンBの阻害剤(CA-074Me)を用いて、IL-1αの産生を調べる。また、ペプチドトランスポーター SLC15A を介して菌体成分が細胞質へ放出される可能性を検討するために、XS-106細胞においてSLC15A1, SLC15A2, SLC15A3 あるいは SLC15A4 をCRISPR-Cas9システムによりノックアウトし、IL-1αの産生を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等の消耗品費や旅費、学会参加費等に使用したが、未使用額がある。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は、次年度の試薬等の消耗品費に充てる。
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