本研究では、口腔連鎖球菌Streptococcus sanguinisがInterleukin-1α(IL-1α)の分泌を誘導する分子機構を明らかにし、本菌による感染性心内膜炎の病因論解明ならびに新規予防・治療法開発の一助とすることを目的とする。S. sanguinisは、A/J マウス由来樹状細胞(XS-106細胞)ならびにC57BL/6より採取した骨髄由来マクロファージ(BMMs)にIL-1αの産生を誘導したが、それらの活性はcaspase-1、NLRP3あるいはASCノックアウトマウス由来BMMsで有意に減弱した。また、本活性はcalpain阻害剤であるMDL28170により阻害されたが、caspase-1阻害剤であるz-YVAD-FMKでは阻害されなかった。また、XS-106細胞に対するIL-1α産生誘導活性は、貪食阻害剤であるサイトカラシンD、P2X/P2Y(ATP/ADPレセプター)の阻害剤であるoATPにより阻害された。また、菌体刺激時の細胞外ATP濃度を測定したところ、菌量ならびに時間依存的に増加し、それに伴いIL-1αの産生も誘導された。さらに、細胞外ATP濃度の増加は、サイトカラシンDにより阻害された。また、Proximity ligation assayによりIL-1αとcaspase-1が細胞質で共局在することが観察された。これらの結果から、S. sanguinisはXS-106 細胞ならびにBMMsに対してIL-1α産生を誘導する活性を有し、その活性発現にはNLRP3インフラマソームが関与していることが示唆された。しかしながら、NLRP3インフラマソームの活性化で誘導されるcaspase-1のタンパク質分解活性が重要ではなく、caspase-1とIL-1αが細胞質で共局在していることが何か重要な役割を果たしているのではないかと推測された。
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