研究実績の概要 |
私はこれまでにToll-like receptor 2(TLR2)の発現上昇,P.gingivalis-LPSへの感受性上昇を介し,肝臓での炎症及び線維化を促進することでP.gingivalis歯性感染が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態を増悪させることをin vivoおよびin vitroの実験で示した.今年度は,歯周炎を進行させる代表的な歯周病原因菌であるP.gingivalis(Pg),T denticola(Td),T forsythia(Tf) の3菌種(red complex(RC))混合歯性感染によるNASH病態増悪について, P.gingivalis歯性感染実験と同様の方法を用いて検討した.野生型(WT)マウスに対し,高脂肪食(HFD)を12週間投与して脂肪肝を誘導後,2群に分け,そのうち1群にはred complexを歯髄より歯性感染させた(RC(+)群).普通食(CD)にて同様に飼育,処置したマウスも作成し、CD-RC(-)/(+)群,HFD-RC(-)/(+)群の4群を作成した.処置後6週間で肝組織を回収し,組織学的に比較検討した. HFD-RC(+)群は他3群(CD-RC(-)/(+)群,HFD-RC(-)群と比較し,マクロファージの集簇数,線維化面積が増加した.以上の結果より,red complex混合感染は,P.gingivalis歯性感染と同様, NASH病態を増悪することが示された.
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今後の研究の推進方策 |
in vivo実験において,red complex混合感染においても同様にNASH病態を増悪することが組織学的検討において示されたことから,引き続き肝臓から抽出したmRNAでの炎症性サイトカインおよびインフラマソームmRNA発現の変化および,タンパクレベルでのサイトカインの産生量を比較する.また, 顎骨の変化, および血清中のLPS濃度や炎症性サイトカイン濃度についても比較検討を行う.本年度と同様の方法を用い, TLR2ノックアウトマウスにおいてHFD群を作成し, red complex歯性感染によるNASH病態増悪におけるTLR2経路の意義を明らかにする.また,WTおよびTLR2ノックアウトマウスを用いて,HFD群を作成し, 2種感染群(Pg+Tf / Pg+Td / Td+Tf (+)),非感染群(Pg+Tf / Pg+Td / Td+Tf (-))の2群に分け,計6群を作成し, 同様の検討を行う. また, in vitro実験において, 正常肝細胞,および脂肪化肝細胞に抗TLR2中和抗体を投与し,TLR2を阻害した後, Pg,Td,Tf 単一菌種生菌,死菌による刺激を行い,炎症性サイトカインmRNA発現の変化における比較検討を行う.
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