研究課題/領域番号 |
16K20438
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
齋藤 雅子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (00723892)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / Tfh / 胚中心 |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患発症には、加齢変化に伴う細胞と抗原との親和性の低下、および自己抗体の増加が関与することが示唆されてきている。本研究では、自己免疫疾患のひとつであるシェーグレン症候群のモデルマウス(SSモデルマウス)を用いて、加齢に伴う自己抗体の産生機序を解明し、自己免疫疾患の病態機序を明らかにすることを目的とした。B細胞からの抗原特異的な抗体産生の誘導には、二次リンパ組織内での胚中心反応が重要な働きをしていることが知られており、濾胞性T細胞 (Tfh)と胚中心B細胞が安定的に相互作用することで胚中心を形成し、効率良くB細胞の活性化と抗体産生を促すことができる。そこで、SSモデルマウスを用いて、経時的に二次リンパ組織内におけるTfh細胞(CD4+CD62L-CXCR5+PD-1+) の割合・細胞数をフローサイトメーターにて解析した。その結果、SS病態を発症しているSSモデルマウス(3ヶ月齢♀)では、コントロールマウスと比較して、脾臓と頚部リンパ節のリンパ濾胞内におけるTfh細胞の割合および細胞数の有意な増加が認めらた。また、加齢に伴ってTfhの細胞数も有意に上昇することが明らかとなった。さらに、組織切片を用いた検討から、SS 病態を発症しているSSモデルマウス(3ヶ月齢♀)では、コントロールマウスと比較して、リンパ節における濾胞形成が過剰であることも明らかとなった。このことから、異常に分化または増殖したTfhは、自己反応性のB細胞に過剰な活性化シグナルを与え、自己抗体の産生を促進している可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究室で樹立したSSモデルマウスで、Tfhの異常を含む胚中心応答の亢進がみられた。よって、このSSモデルマウスが自己免疫疾患の病態解明に非常に有用なことが示された。また、1~12月齢のSSモデルを用いてTfhの機能を検討することで、加齢に伴うSS発症のメカニズムを評価することができる。さらに加齢的に著しく上昇する分子があれば、その分子を特定し、siRNAでノックダウンするなどの評価系を用いてその病態形成に関与しているかを明らかとすることができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の検討予定として、リンパ濾胞内における胚中心形成が過剰でないかを詳細に検討するために、それらのマーカであるIgD, PNA抗体を用いて免疫組織染色し評価する。また胚中心B細胞の特異的なマーカー(B220+ Fas+ GL7+)を用いて、胚中心B細胞の割合・細胞数を経時的に評価する。さらに、Tfh細胞と胚中心B細胞の局在に偏りなどの異常がないかを検討する。特にB細胞では、胚中心を形成する前の濾胞外縁部に局在する段階でBcl-6の発現が上昇することが胚中心形成に重要であることが知られているため、濾胞外縁部におけるBcl-6の発現が過剰でないかも合わせて検討する。加えて、B細胞の胚中心への移動に要する日数を経日的に評価すると共に、T細胞領域に局在するTfh細胞と胚中心B細胞とが、うまく相互作用できているかどうかについてもライブイメージングを用いて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に納品となり、支払いが完了していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
4月に支払いが完了する予定である。
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