研究課題/領域番号 |
16K20444
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
加藤 晃一郎 金沢医科大学, 医学部, 助教 (30719373)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 |
研究実績の概要 |
細胞膜リン脂質代謝酵素の一つであるsphingosine kinase(SphK)-1は、ceramide/shingosine-1-Pバランスの調整によりさまざまな生体現象に関与し、腫瘍ではがん細胞の増殖とアポトーシスに重要な役割を演ずるとされてきた。SphK-1の口腔扁平上皮癌における浸潤増殖への関与の可能性を検討するため、口腔扁平上皮癌69例のSphK-1発現とがん細胞の浸潤性発育・生命予後との関係に加え、その生物学的意義を検討し、以下の成績を得た。 1.口腔扁平上皮癌69例中38例(55%)に浸潤先進部腫瘍細胞におけるSphK-1の高発現を認めた。 2.浸潤様式gradeⅢ/Ⅳ群、間質の線維芽細胞高反応群、頚部リンパ節転移陽性群でSphK-1の有意な高発現を認めた。 3.SphK-1高発現群は、低発現群と比較し有意に生命予後不良で、単変量解析では病期、vimentin発現と共に有意な予後因子であった。 4.SphK-1の発現は、Eーcadhelinの発現低下、Vimentinの高発現と関連を示したが、Ki67標識率との有意な関連は認めなかった。 以上の所見から、SphK-1は口腔扁平上皮癌の浸潤先進部腫瘍細胞に高発現し、腫瘍細胞のEpithelial-Mesenchymal Transition(EMT)と周囲間質細胞への活性化を介した浸潤性増殖と生命予後に関与すると考えられ、SphK-1は口腔扁平上皮癌の発育制御に向けた標的分子である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔扁平上皮癌69例における腫瘍浸潤先進部でのSphK-1発現と生命予後との関わりを検証し、SphK-1の生物学的意義を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に得られた結果からsphingosine kinase(SphK)-1は、腫瘍細胞のEpithelial-Mesenchymal Transition(EMT)と周囲間質細胞への活性化を介した浸潤性増殖が明らかとなり、口腔扁平上皮癌の発育制御の標的分子となる可能性を検討するため、レセプターを含め浸潤能亢進への関わりをin vitroあるいは実験モデル動物系を用い検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現有の研究試薬の一部を供用して使用することができたため、743円の次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究で得られた結果の再現性を確認するため反復実験を計画しており、検証に必要な備品や薬品を当該年度の交付決定額に加え次年度使用額を使用する。
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