研究課題/領域番号 |
16K20448
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三田 郁美 (和田) 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 非常勤講師 (30754981)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光走査型干渉断層計 / 非う蝕性歯頸部欠損 / 脱灰 / う蝕 / Tooth wear / 再石灰化 |
研究実績の概要 |
光走査型干渉断層計(Swept-Source Optical Coherence Tomography ;以下SS-OCTと表記)を用いて、非う蝕性歯頸部欠損(Non-carious Cervical Lesion: 以下NCCLと表記)の病因解明を行い、その診断や予防及び治療法の提案に取り組んだ。 本研究はSS-OCT画像を用いてNCCLの診断基準値を提示することで、検出精度と客観性の高い、新しい歯科診断の創造を目指しており、実際の臨床現場にて得られたデータ分析を行っている。 現在はNCCLの長期観察期間中であり、研究実地計画に基づいて脱灰の診断基準値の標準化及びデータ集計の2つの段階を進めている。脱灰の診断基準値の標準化については、得られた生活歯のNCCLのデータををSS-OCTを用いて観察し、光の屈折率、減衰率、散乱係数、異方性などの光学的特性の変化を計測し、病変の診断の指標となる数値を調査している。また、NCCL断層画像のデータ集計も行っている。SS-OCTは全体の3D画像が構築できるため必要部位の撮り忘れがなく、画像取得後でも減衰係数等の各種データの抽出が可能であるため、蓄積されたデータから分析・集計を行っている。 平成29年度は研究成果に基づいて、1本の論文発表及び2件の学会発表を行った。 これらの研究はSS-OCTを用いて歯の歯頚部の解剖学的構造や歯の脱灰状況を明らかにした。特に歯頚部の解剖学的構造については未だに病因子の明らかにされていないNCCLの進行を解明するのに重要な所見となり、当該分野の研究に貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は平成28~30年度にわたり採取した患者口腔内のNCCLのSS-OCT断層画像を用いて縦断調査を行う計画の最中であり、研究は順調に進展している。各生活歯の得られたデータから、NCCLの大きさ、咬耗、亀裂、脱灰についてSS-OCTをもちいて断層画像の分析及びモニタリングを行っている。また脱灰の診断基準値の標準化に関しては、より正確な病変の診断の指標となる数値を調査するために検体数を増やす必要があり、引き続きデータの採取・解析を行う必要があり、おおむね計画通りに進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究で得られたNCCLの脱灰診断基準値を基に、NCCL断層画像のデータ集計を行う。脱灰の診断基準値の標準化をし、NCCLの成因説の検討及びSS-OCTを用いたNCCLの診断や治療、予防管理方法の提案を行う。 NCCLの成因説の検討:咬合応力によって歯頸部に亀裂が生じ、そこから欠損を形成するという咬合圧説は有名であるが、未だに臨床実験はなされていない。咬耗と亀裂、NCCLの進行の経時変化を観察することで咬合圧説の妥当性を検討する。また、申請者の研究によるNCCL脱灰の報告は今までにない所見であり、新たなNCCL成因説の検討が必要とされる。NCCLは非う蝕性の疾患であるとされている為、細菌の関与しないミネラル密度の減少がNCCLの進行に関与している可能性があげられる。 SS-OCTを用いたNCCLの診断や治療、予防管理方法の提案:解析にSS-OCTを用いることで、臨床現場でのSS-OCTを用いたNCCLの診断や予防管理方法の提案に取り組む。標準化された脱灰基準値より、NCCLの進行程度の診断が可能となる。この結果より、治療介入のタイミングを推察し、治療方法を提案する。さらに、成因説を検討する事でNCCLの有効な予防管理方法を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在申請者の研究機関で所有しているSS-OCTに加えて、当研究機関では光干渉断層計(以下OCTと記載)研究の更なる発展の為にPS-OCTの購入を検討している。 予定していた学会発表、論文投稿に関する諸経費に加えて、新しいOCTの導入の予算に充てたい為。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、学会発表、論文投稿に関する諸経費に使用金額を充てる。 さらにOCTの共同の研究者とともに新しいOCT購入について相談し、必要に応じて出資する。
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