研究課題/領域番号 |
16K20451
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大墨 竜也 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30759725)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオフィルム / Calgary Biofilm Device / ストレス応答 |
研究実績の概要 |
口腔洗浄液の抗菌成分がバイオフィルム深層部へ必要な濃度で浸透せず、バイオフィルム内の細菌がストレス応答を起こし、バイオフィルム形成を促進することと、口腔洗浄後に残存したバイオフィルム構造体が、二次的バイオフィルム形成のための土台となり、バイオフィルム形成が起こりやすくなることを明らかにしてきた。さらに、異種細菌を共培養した複合バイオフィルムモデルにおいて菌体外マトリックス成分の増加が起こることが報告されている。 本研究の目的は、口内環境に近い複合系バイオフィルムモデルを用いて、低濃度抗菌成分の暴露下におけるストレス応答下でのバイオフィルム形成促進機構を明らかにすることである。Streptococcus mutans、Streptococcus oralis、Actinomyces naeslundiiの3菌株を0.5%グルコース含有培地において好気および嫌気条件で、Calgary Biofilm Device(CBD)を用いた静置系(マイクロプレートカバーの内側に設置された突起:Pegへのバイオフィルム形成)でのバイオフィルムモデルを構築した。CBDのPegは各々撤去可能で、バイオフィルム形成後そのまま各種解析法にかけることができる(Harrison Joe J et al.: Biol Proced Online 8:194-215, 2006)。また、sub-MICやMBECのスクリーニングが簡便である実験系であり、規格化したバイオフィルムモデルを用いて解析を行った。バイオフィルム形成を視覚的に確認するため、SEMや共焦点レーザー顕微鏡での蛍光イメージングを行ってきた。sub-MICの段階的濃度で抗菌成分を作用させた実験を開始したところであるが、ストレス応答の詳細については現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Calgary Biofilm Deviceを用いた複合菌でのバイオフィルム形成モデルの構築に予想以上の時間と労力を要した。 理由は以下の通りである。用いた3菌株はいずれも通性嫌気性である。培養デバイスの使用法上、振盪培養が推奨されており、振盪培養器を用いて好気条件での培養を行った。しかし、好気条件では、Calgary Biofilm Deviceの特徴である、Pegへの細菌の付着が少なく、バイオフィルム形成に苦慮した。そこで、実験期間中、新たに使用可能となった嫌気チャンバー(Invivo2)を用いて、嫌気環境下で培養を行った。それにより、バイオフィルムモデルが円滑に構築できるようになった。しかし、各種抗菌成分暴露下でのバイオフィルム形成動態を詳細に検索するに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、各種抗菌成分暴露下でのバイオフィルム形成動態について、ストレス応答を含、引き続き共焦点レーザー顕微鏡による三次元的検索や、real-time PCRによる定量的解析を行う。また、よりin vivoの環境に近いフローセルシステムでも同様の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった、微量DNA量測定器について、学内の共同利用機器として使用が可能となったため、支出が抑えられた。また、若干実験の予定が計画よりも遅れているため、real-time PCR試薬等の消耗品等をまだ購入していないため支出が少なかったことが挙げられるが、今後購入予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子解析並びにタンパク質発現解析等を行う必要性があるため、real-time PCR試薬、培地、マイクロプレート等の実験消耗品に使用する。なお、得られた研究成果を報告するための論文報告費用・学会発表費用としても使用する予定である。
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