研究課題
口腔洗浄液の抗菌成分がバイオフィルム深層部へ必要な濃度で浸透せず、バイオフィルム内の細菌がストレス応答を起こし、バイオフィルム形成を促進することと、口腔洗浄後に残存したバイオフィルム構造体が、二次的バイオフィルム形成の足場となり、バイオフィルム形成が起こりやすくなることを明らかにしてきた。さらに、異種細菌を共培養した複合バイオフィルムモデルにおいて菌体外マトリックス成分の増加が起こることが報告されている。本研究の目的は、口内環境を模した複合系バイオフィルムモデルを用いて、低濃度抗菌成分の暴露下におけるストレス応答下でのバイオフィルム形成促進機構を明らかにすることである。S. mutans、S. olalis、A. naeslundiiの三種複合バイオフィルムをCalgary Biofilm Device(CBD)を用いた静置系(マイクロプレートカバーの内側に設置された突起:Pegへのバイオフィルム形成)で形成し、最小発育阻止濃度以下(sub-MIC)のグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)を作用させた。Calcein-AMやLIVE/DEAD染色を用いた蛍光イメージング法やSEM、定量的細菌測定で解析した。その結果、バイオフィルム量の増加が認められた。しかし、総菌数、生菌数には有意差が見られなかったことより、sub-MICのCHGは複合系バイオフィルム中の細菌増殖に影響を与えず、細胞外マトリックスの産生に影響を与えることでバイオフィルム形成を促進させることが示唆された。最終年度もストレス応答の詳細について分子生物学的に解明するには至らなかったため、今後も、本実験で確立したバイオフィルムモデルにおいて、バイオフィルム形成動態に影響を与えていると推察されるS. mutansに焦点を当てた解析を行っていく予定である。
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