研究課題
歯科ボンディング材は,含有される機能性モノマーによって,接着強さと耐久性が異なることが知られている。接着耐久性が良いとされている10-MDP(10-Methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)であっても,長期的には劣化が避けられないことがわかっており,新規の長期耐久性のある機能性モノマーの開発が望まれている。本研究では,研究代表者がこれまでに行ってきた機能性モノマーの解析手法や結果を応用し,新規の種々の機能性モノマーを合成し,アパタイトとの化学反応性の解析や歯質との接着強さ測定とナノレベルでの接着界面の観察を行うことにより,初期接着が十分あり,かつ長期耐久性を備えた新規機能性モノマーの開発を行うことを目的とした。研究期間中に複数の機能性モノマーの合成などを行った。また、それらの機能性モノマーは、アパタイトとの反応性について、x線回折や固体NMR装置を用いて解析を行い、また歯質との接着試験を行い、接着性を評価した。その結果、長鎖のフッ素系リン酸モノマーが、象牙質に対する接着力、その耐久性に優れていることが分かった。特に、サーマルサイクル試験での長期の耐久性評価では、10-MDPよりもすぐれていた。このモノマーは、x線回折や固体NMR装置での解析で、アパタイトと化学的に吸着し、難溶性のカルシウム塩を形成していることがわかった。また、そのカルシウム塩の形成は、象牙質に塗布した時にも観察された。このことから、このフッ素系リン酸モノマーは、実用化できる可能性を秘めているものであると考えている。本研究結果は、2017年サンフランシスコでのIADRで発表し、現在論文執筆中である。
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