研究課題/領域番号 |
16K20463
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
川口 綾 東京歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (10581267)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 三叉神経節細胞 / ニューロン / パッチクランプ法 / 機械刺激 / 局所麻酔薬 |
研究実績の概要 |
歯髄痛や三叉神経痛発生の原因の一つに神経周囲の組織圧増加が挙げられる。本研究では初代培養ラット三叉神経節ニューロンをAおよびCニューロンに分類し、このニューロンに圧力を模した機械刺激を加えた際の、近傍ニューロンに生じる電気活動をパッチクランプ法にて記録することで、周囲ニューロンとのネットワークを解明することを目的とした。 まず、細胞体直径30 μm以下の三叉神経ニューロンに対し、FITC-IB4による生体染色、およびステップ刺激による内向き電流の波形・減衰時定数の相違によりニューロンの分類を行った。次に機械刺激を併用したパッチクランプ法を行い、IB4陽性-陽性、IB4陽性-陰性、IB4陰性-陰性ニューロン間での記録を行ったが、近傍細胞内での誘発電流は確認されなかった。これによりパッチクランプ法によるニューロン間での相互関係の解明はこれ以上の結果が望めないと判断し中断した。 よって、機械刺激を加えたニューロン自身の電気活動を記録することで、組織圧増加がニューロンに及ぼす影響を解明することとした。IB4陽性・陰性ニューロン両方で細胞外Na+(137 mM)およびCa2+(2.0 mM)存在下に機械刺激を加えたところ、刺激依存性の内向き電流が観察された。この内向き電流は細胞外Na+非存在下では有意に抑制されたが、細胞外Ca2+非存在下では抑制されなかった。以上の結果より機械刺激誘発性内向き電流は主にNa+の流入によるものと考えられた。次にNa+チャネルブロッカーであるリドカインおよびカルバマゼピンを作用させたところ、機械刺激誘発性内向き電流の有意な抑制を確認した。現在、その他の局所麻酔薬(QX-314、プレガバリン等)を作用させた際の内向き電流の変化を記録すること、またこの機械刺激を受容している受容体の解明を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FITC-IB4による初代培養ラット三叉神経節細胞の染色プロトコールを確立するのに時間を要した。過去に他施設で行われた染色手法を引用し本研究に使用する細胞に対して試みたものの、パッチクランプ法による電気生理活動を記録することができなかった。よって本研究における染色プロトコールに改変する必要があり、方法の模索に時間を要した。 また上記「研究実績の概要」に記載したとおり、機械刺激によって生じる周囲ニューロンへの誘発電流を記録することができなかったため、細胞間コミュニケーションを検討する研究は中止とし方向転換する必要があった。よって圧刺激が直接細胞に与える影響を観察することで歯髄痛、三叉神経痛の解明へ繋げることとした。現在、直接機械刺激を加えたニューロン自身の電気生理活動の記録に成功している。 また、細胞体機械刺激に対する臨床治療薬の影響が観察されたため、今後はこの方法を応用して機械刺激受容体レベルでの解明を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初代培養ラット三叉神経節細胞における機械刺激誘発性電流は特徴的な波形を示すことが確認されている。まずはその波形の詳細な解析を行ない、その分類を行う。新規局所麻酔薬として有望なQX-314、三叉神経痛治療薬であるプレガバリンが、機械刺激誘発性内向き電流に与える影響についてパッチクランプ法を用いて観察する。また、圧刺激を受容するとされるチャネル(TRPチャネル、Piezoチャネル)の関与についての検討も同様に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
薬品が予定より安価に購入できたため、予定金額より端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度支給金額とあわせて、新しい薬品を購入する。
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