研究課題
コンポジットレジンによる修復治療は,現在の歯科医療を支える重要な治療法のひとつであるものの,修復物および接着界面の経時的劣化は避けがたいものである。特に,接着界面の耐久性は,化学的,生物的および物理的な劣化因子に影響を受ける。これらの因子が複雑に絡み合うことで劣化が進行するものと考えられている。そこで,口腔内で繰り返し生じる物理的因子に着目,最大破折抗力以下の繰り返し荷重負荷を再現したFatigue試験からユニバーサルアドヒーシブ接着システムの接着耐久性について検討するとともに他の劣化因子を組み合わせることで接着界面を構成する部材の化学的,機械的分析から,その接着界面の"質"が破壊プロセスに及ぼす影響を解明することを目的とした。28年度の取り組みから,ユニバーサルアドヒーシブ塗布前のリン酸処理がユニバーサルアドヒーシブシステムの接着疲労耐久性に及ぼす影響については,十分な成果を出すことができ,エナメル質においてはリン酸処理3秒以上で十分な接着耐久性を獲得できることを明らかとした。一方,象牙質においてはリン酸エッチングの影響はその接着耐久性に影響を及ぼさないことが判明した。29年度に関しては,ユニバーサルアドヒーシブの接着界面の“質”に焦点を絞って研究を遂行した。すなわち,形成された接着界面の耐久性向上を狙って,アドヒーシブ塗布の2度塗りがその接着耐久性に及ぼす影響について検討した。その結果,ユニバーサルアドヒーシブの2度塗りは,エナメルおよび象牙質ともにその接着耐久性の向上に寄与することが判明するとともに2ステップセルフエッチシステムの2度塗りは,その接着耐久性を低下させることを明らかとした。このことから,接着耐久性に向上には至適アドヒーシブ層の厚みがあることが示唆された。
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