研究課題/領域番号 |
16K20467
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
山田 理絵 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 非常勤講師 (70772151)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯髄 / コラーゲンゲル / 再生医療 / 移植 |
研究実績の概要 |
5週齢のWistar系雄性幼若ラットを入手した。まず一週間程度実験環境に慣らし、環境に慣れた6週齢の雄性ラットを実験に用いた。全身麻酔を施した後、手術台に固定し、希ヨードチンキと過酸化水素水で消毒した上顎および下顎の切歯計4本を抜歯した。抜歯後、乾燥しないよう留意しながら歯をメスで半切し、歯冠側および根尖側を除く歯髄組織を摘出した。残った切歯は、2×2㎜の大きさに切断し象牙質片を作製した。その後、象牙質片は移植実験に供するため歯の保存液に浸漬して4℃冷蔵保存した。摘出した歯髄組織をout growth法で初代培養を行うため、実体顕微鏡下で細切し、タイプⅠコラーゲンコートの100㎜ディッシュ(コラーゲンコート Bio-Coat)に播種した。培養液には10%FBSを添加したDMEMを自家調整したDMEM-FBSを用いて初代培養を開始した。初代培養後約20日で細胞の外生がみられ、継代を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
外傷により過度の外力を受けて脱臼した歯は、脱落後の経過時間が長く、歯根膜に障害が及んだ場合など、歯根膜が保存不可能な場合、壊死歯根膜組織を除去した後に再植術が施される。その場合はセメント質が露出した状態になり、術後に外部吸収や骨性癒着が生じやすくなるため、歯根膜様組織の介在が必要となる。本研究は、歯髄由来細胞を含有するコラーゲンゲルで被包した象牙質片周囲の治癒形態について組織学的に検索するため、象牙質片をヌードマウスの背部皮下に埋入し、周囲組織の治癒について病理組織学的に検索を行い、その後実際にラットの抜歯窩に歯髄由来細胞含有コラーゲンゲルを併用して再植を行う処置の歯根膜再生の補助作用について検索するものである。 抜去したラット上下顎切歯から得られた歯髄組織からout growth法で初代培養を行い、継代を行っていたが、CO2インキュベーターの不調やコンタミネーションの発生などが起こり、細胞の増殖が不十分になり、十分な細胞数が得られなかったため、本年度中に移植実験へ移行することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
培養している歯髄由来の線維芽細胞が移植可能な数に達したら、線維芽細胞含有のコラーゲンゲルを作製し、冷蔵保存している象牙質片を包皮させてヌードマウスの背部皮下に移植する。なお、線維芽細胞を含むコラーゲンゲルに象牙質片を被包させたものと、コラーゲンゲルと象牙質片のみのものとに分けて移植実験を行う。実験期間は6週間とし、象牙質表面および周囲組織の経時的変化について病理組織学的に検索する。 つぎにWistar系雄性ラットを用いて意図的再植歯周囲の硬組織再生に関して病理組織学的に検索する。すなわち、全身麻酔下でラット上顎第一臼歯(M1)を抜去し、再植前にすべての歯根の先端1㎜を根尖切除し、逆根管充填を施す。被験歯根を最も大型である近心根とし、歯根膜をスケーラーで除去し、他の歯根は歯根膜を除去せずに通法の再植術を行う。その際、抜歯窩に、コラーゲンゲル併用のもの、併用しないものの2群に分ける。 再植後1、7、14日後に動物をサクリファイスし、上顎骨を一塊として取り出し、10%緩衝ホルマリンに浸漬固定する。EDTA脱灰、トリミング後、通法に従い、パラフィン包埋を行う。作製したパラフィン切片をHE染色、AZAN染色、免疫染色等、施して再植後の治癒経過を病理組織学的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラットの切歯から採取した歯髄組織からout growth法で初代培養を行ったが、コンタミネーションの発生やCO2インキュベーターの不調、歯髄由来の線維芽細胞の増殖が不十分であったため、ヌードマウスの背部皮下組織への移植が出来なかった。そのため、今年度で購入する予定であった移植実験に用いる小動物用手術器具やヌードマウス、それに関する消耗品などを次年度に購入する予定に変更したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
歯髄由来の線維芽細胞の数が必要数に達すれば、ヌードマウスへの移植実験に移ることが可能になるので、ヌードマウスやそれに関する消耗品、実験器具などを購入する予定である。ラットに対する意図的再植術も行うため、ラットや実験に必要な器具や消耗品も購入予定である。 また、それぞれのパラフィン切片を作製後、病理組織学的検索を行うのに必要な薬剤や必要に応じて免疫化学染色の抗体やキットも購入する予定である。
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