外傷などにより過度な外傷を受け脱臼した歯は、脱落後の経過時間が長く、歯根膜に障害が及んだ場合などで保存不可能な場合、壊死歯根膜組織を除去した後再植術が行われる。その場合、術後に外部吸収や骨性癒着が生じやすくなるため、その防止には歯根膜様組織の介在が必要となる。本研究の目的は、脱臼歯を歯髄由来細胞含有コラーゲンゲルで被包し、その後の治癒形態について病理組織学的に検索することである。 今年度は初年度で得られた歯髄由来細胞(3~4代)を用いて細胞含有コラーゲンゲルを作製した。8週齢のWistar系雄性ラットの上顎第一臼歯(M1)を被験歯としスプーンエキスカベーターで脱臼、根管充填用ピンセットで抜去後、スケーラーで可及的に歯根膜組織を除去した。根管が最も太い近心根管には、逆根管充填用の窩洞を形成し、MTAを充填した。抜歯窩を生理食塩液で洗浄、乾燥した後、歯髄由来細胞含有コラーゲンゲルを併用した群とコラーゲンゲルのみの群の2群に分けて意図的再植術を施した。実験期間を2週と4週とし、実験期間終了後に4%パラホルムアルデヒド溶液に浸漬固定した。EDTA溶液で脱灰後、通法に従ってパラフィン包埋を行いHE染色およびAZAN染色を行い、光学顕微鏡下で観察した。全ての被験歯で脱落および動揺はみられなかった。歯頚部付近では歯根膜様組織からセメント質に埋入するシャーピー線維様のコラーゲン線維が観察され、根尖部付近では新生された骨様組織が観察された。血管新生がわずかに観察された一方、炎症性細胞浸潤が観察された部位では歯根の吸収がみられた。 また今年度は前年度で行ったヌードマウスへの移植の追加実験を行い、通法に従って厚さ5μmのパラフィン切片を作製して組織学的および免疫組織学的観察を行った。
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