研究課題/領域番号 |
16K20468
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
深田 哲也 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (20386254)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ユージノール / 歯髄 / 炎症 / プロスタグランジン |
研究実績の概要 |
ユージノールは歯科領域で殺菌や抗炎症作用を期待して古くより使用されている。申請者はその作用機序の一つとして炎症を惹起した歯髄におけるプロスタグランジンの合成阻害能、特にシクロオキシゲナーゼに対する作用を報告してきた。しかしながら、プロスタグランジンが生理作用を発現するには合成されたプロスタグランジンが細胞外に放出され、特異的受容体と結合し細胞内シグナル伝達が起こるという一連の過程が必須である。申請者は前年度に、ラット切歯に窩洞を形成し、酸化亜鉛水練和物を填塞して炎症を惹起した歯髄内ではプロスタグランジンE2 受容体 (EP) のサブタイプ、特に EP1 と EP2 の発現が亢進していること、また酸化亜鉛水練和物に代えて酸化亜鉛ユージノール練和物を窩洞に填塞することで、その亢進が抑制されることを報告した。この作用の本体は窩洞に填塞した酸化亜鉛ユージノール練和物より歯髄内に遊離したユージノールであると想定し、以下の検討を行った。 ① C-14 標識ユージノールを用いて酸化亜鉛ユージノール練和物を作製、切歯窩洞部に填塞した。一定時間後、歯髄を摘出し放射能を液体シンチレーションカウンタにて計測し、歯髄内へのユージノール移行を確認した。 ② ラット切歯歯髄より初代培養細胞を調製し、培養細胞に発現するプロスタグランジン合成系酵素と EP サブタイプを確認した。さらにユージノールを培養系に添加することでそれら酵素および受容体の発現変化を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯髄内のプロスタグランジン E2 受容体 (EP) の中で、 EP1 および EP2 は炎症時にその発現の亢進が認められた。炎症惹起時に酸化亜鉛ユージノール練和物を歯髄に適用すると、その発現亢進は抑制された。 窩洞に填塞した酸化亜鉛ユージノール練和物から歯髄へのユージノールの遊離には、C-14 標識ユージノールを用いて評価した。C-14 標識ユージノールを用いて作成した酸化亜鉛ユージノール練和物を填塞した歯髄を歯冠部と歯根部に分け、それぞれの放射能を計測したところ、歯冠部により多く C-14 標識ユージノールに由来する放射能を認めた。 未処置ラットの切歯歯髄を摘出し、初代細胞の培養系を確立した。その細胞のユージノール応答性をプロスタグランジン E2 合成系酵素および上記した EP を指標に確認した。培養細胞に起炎物質としてリポポリサッカッライドを添加、さらにユージノールを添加すると、EP2 および EP3 の mRNA 発現が抑制された。 以上のことから、酸化亜鉛ユージノール練和物中のユージノールはプロスタグランジン E2合成系酵素の活性と発現量の抑制そして受容体の発現レベルでの抑制を介して、その作用を示すものと考えられた。 以上のことから、酸化亜鉛ユージノール練和物中のユージノールはプロスタグランジン E2合成系酵素の活性と発現量の抑制そして受容体の発現レベルでの抑制を介して、その作用を示すものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
歯髄内へのユージノール移行を C-14 標識ユージノールと液体シンチレーションカウンタを用いて検討した。C-14 標識ユージノールで作成した酸化亜鉛ユージノール練和物を填塞した歯髄を摘出し、歯冠部と歯根部に二分した。C-14 標識ユージノールに由来する放射能は歯冠部により多く認められ、歯髄内にユージノールが移行することが明らかとなった。より詳細なユージノールの分布を検討するためにオートラジオグラム法を用いる予定である。しかし、今回移行が確認された C-14 標識ユージノールの放射能ではオートラジオグラム法での検出は足りないと考えられた。そこで、 C-14 標識ユージノールを追加購入し、比活性を高くするため濃縮したうえでオートラジオグラム法を実施する。 培養歯髄細胞に添加したユージノールは EP2 および EP3 の発現を mRNA レベルで抑制した。さらに両受容体のセカンドメッセンジャーである cAMP を指標にしてユージノールの作用を検討する。 以上の結果をまとめて、論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
C-14 標識ユージノールを用いて、液体シンチレーションカウンタおよびオートラジオグラム法で歯髄内ユージノール移行と分布をそれぞれ確認する予定であった。液体シンチレーションカウンタで検出はできたものの、比活性が低くオートラジオグラム法では検出できないものと考えられた。そこで C-14 標識ユージノールを追加購入し濃縮し、オートラジオグラム法に使用する予定である。
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