昨年度までに試作した自己接着型フロアブルコンポジットレジンを用い、市販の従来型自己接着型フロアブルコンポジットレジンと2種類の従来型グラスアイオノマーセメントに対し引張り接着強さを検討した。 引張り接着強さ試験はヒト抜去歯のエナメル質および象牙質を用いて、#600の耐水研磨紙で平坦化後にレジンを填入し、スライドガラスにて圧接して光照射し、内径3.0mm,深さ2.0mmのクリアレジンモールドを固定し、さらにレジンを填入し、光照射を行い重合させる。試料数は20個とし、試料片は37℃湿度99%保管箱に24時間保管後、精密万能試験機(オートグラフAGS-X、SHIMADZU)を使用し、クロスヘッドスピード0.5mm/minの条件で引張り接着強さを測定した。さらにサーマルサイクル試験(4℃と60℃に各1分間浸漬)を50回負荷した後の引張り接着試験を同様に測定した。 引張り接着試験の結果の平均値と標準偏差は、試作自己接着型フロアブルコンポジットレジンではエナメル質において24時間後で4.4±2.5MPaで最大値は9.6MPa、最小値は0.3MPaで、サーマル50回では5.3±3.7MPaで最大値は12.8MPa、最小値は0.50MPaであった。象牙質においては24時間後で5.3±2.7MPaで最大値は13.0MPa、最小値は1.1MPaで、サーマル50回では2.1±1.8MPaで最大値は7.2MPa、最小値は0.01MPaで非常にばらつきが大きくなった。従来型自己接着フロアブルコンポジットレジンおよび2種類の従来型グラスアイオノマーセメントの値よりは高いものとなった。しかしながら現在日常で使用されているボンディングシステムを用いたフロアブルコンポジットレジンの歯質との引張り接着強さが40MPa以上、サーマルサイクル後の値も約40MPaあることから、改良の余地がかなりある結果となった。
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