研究課題/領域番号 |
16K20476
|
研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
嘉藤 弘仁 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (70745348)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | エムドゲイン / 覆髄 |
研究実績の概要 |
本研究はう蝕治療における象牙質再生に有用な新規覆髄材料の開発を目的として、エムドゲイン(EMD)由来新規合成ペプチドに着目した。このEMD由来新規合成ペプチドはエムドゲインを用いた基礎研究から得られた本研究チームのオリジナルの硬組織形成を促進するペプチドである。申請者はこの合成ペプチドが硬組織再生に重要な役割を果たすヒト間葉系幹細胞の硬組織形成能を早期に促進する作用があることを発見し、硬組織再生に有用な生体材料である可能性を示した。 そこで申請者はこのEMD由来新規合成ペプチドが象牙質再生にも有用であるのか検討し、新規覆髄材として臨床応用につなげることを目的としている。まず、研究実施計画として、大阪歯科大学口腔外科より抜去歯の提供を受け、歯髄幹細胞を分離、培養し、実験に必要な細胞数を確保する。各種濃度(0, 10, 100, 1000 ng/mL)のEMD由来新規合成ペプチドをヒト歯髄幹細胞に作用させ、遺伝子・タンパクを抽出し、硬組織分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ活性の測定、アリザリンレッド染色とギ酸抽出によるカルシウム析出量の測定による石灰化物形成能の評価、象牙質再生マーカーの遺伝子発現(Real-time PCR)、タンパク発現(ウエスタンブロット、ELISA法)について検討することとした。 平成28年度の研究成果として、EMD由来新規合成ペプチドはヒト歯髄幹細胞の細胞増殖能を促進することが明らかになった。またEMD由来新規合成ペプチド(100 ng/mL)の濃度でヒト歯髄幹細胞の細胞増殖を最も有意に促進することが示唆された。したがって、この100 ng/mLを至適濃度として決定し、硬組織分化マーカーの評価を行った。 その結果、EMD由来新規合成ペプチドはヒト歯髄幹細胞のアルカリフォスファターゼ活性と石灰化物形成能を有意に促進することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では抜去歯からヒト歯髄幹細胞を分離し、実験に使用する予定であったが、抜去歯の本数の確保が困難となったため、Lonza社よりヒト歯髄幹細胞の提供を受け、実験に使用することとした。 平成28年度はEMD由来新規合成ペプチドによってヒト歯髄幹細胞の細胞増殖や硬組織分化が促進することを明らかにした。これらの結果を第146回日本歯科保存学会学術大会にて成果報告を行う予定をしている。 これらの進捗状況は当初の予定よりもやや早く達成しており、順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、リアルタイムPCRによる象牙質再生マーカーの遺伝子発現の解析に向けて検討しているところである。またウエスタンブロッティングによるEMD由来新規合成ペプチドのヒト歯髄幹細胞の作用機序についても検討を行っている。今後、これらの解析を完了させ、引き続き平成29年度の実施計画である動物実験による検討を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大学研究費を充当したため、当初の予定より、研究予算が十分に賄えた。そのため、本年度研究費の次年度繰り越しが生じたが、平成29年度の研究予算に充当し予算執行していく予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
QuantStudioリアタイムPCRシステムを用いて、ヒト歯髄幹細胞の遺伝子発現を検討する計画をしている。
|