研究実績の概要 |
本研究は歯髄温存療法における象牙質再生に有用な新規覆髄材料の開発を目的として、エムドゲイン(EMD)由来新規合成ペプチド(SP)に着目した。そこで、EMD由来新規合成ペプチドが象牙質再生にも有用であるのか、その作用機序をin vitro、in vivoともに検討し、新規歯髄温存療法として臨床応用につなげることを目的として検討を行った。 新規合成ペプチド(SP)のヒト歯髄幹細胞(HDPSC)に対する細胞増殖能への影響はSP添加 3日, 5日, 7日の培養後の評価において, SP添加群では対照群と比較して有意に高い値を示し、100 ng/ml濃度のSP添加群が最も有意に高い値を示した。 またSP添加群において, HDPSCに対する細胞遊走能を有意に促進することが明らかになった。HDPSCに対するEMD由来合成ペプチドの硬組織分化への影響は培養開始7日, 14日においてALP活性, カルシウム析出量, 石灰化物形成能を有意に促進し, 培養開始7日においてSP添加群で有意にカルシウム・リン比の上昇が認められた。 さらに、SPがMAPK経路に及ぼす影響をウエスタンブロット法を用いて検討を行った。その結果、SP添加群においてERK1/2, JNK, p-38タンパク発現のリン酸化が誘導されることが明らかになった。したがって、SPは歯髄保存療法における覆髄材料として有用である可能性が示唆された。
|