研究課題/領域番号 |
16K20481
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
原田 章生 東北大学, 大学病院, 医員 (40757267)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジルコニア / 低温劣化 |
研究実績の概要 |
近年、フルカントゥア・ジルコニア歯冠補綴装置の臨床応用が急速に進んできている。しかしながら、ジルコニアの低温劣化がフルカントゥア・ジルコニア補綴装置に及ぼす影響は未だ不明な点が多い。一般的にジルコニアの低温劣化は水瓶や機械的応力が存在する環境下で進展する。したがって、唾液や咬合力に直接暴露されるフルカントゥア・ジルコニア歯冠補綴装置では時間とともに低温劣化が進展し、強度が損なわれることが懸念される。本研究では、ジルコニアの長期安定性に関わる低温劣化の進展に関与する因子を歯科材料学の観点から分析し、その具体的な防止策を追求することを目的としている。 予備試験として直径10 mmの半焼結ジルコニアディスクから板状の試料を切断、試料サイズを揃え、ファーネスで焼結を行った。焼結後の収縮した試料サイズを調査し、期待したサイズになっていることを確認した。また専用の着色材を用いて半焼結体板状ジルコニア試料を染色し、同様にファーネスで焼結を行い試料サイズを確認した。 試料を1個ずつプラスチック枠にレジン包埋し、鏡面研磨の後に100時間のオートクレーブ処理を行い、実体顕微鏡レベルでの観察において、表層から低温劣化が生じていることを確認した。 現在のところ結晶学レベルでの解析までは行っていないが、用意した2群において低温劣化を防止できている結果は得られていない。今後は表層を1層覆ったグレージングを行った群や、咬合調整を想定し、表層の表面粗さを増加、応力誘起相変態機構による単斜晶を増加させた群の比較を行い、どの処理が最も低温劣化を抑制しているか比較する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度計画していたX線回折(XRD)装置や電子顕微鏡(SEM)による板状試料の単斜晶割合の測定までは、ジルコニア試料調整に時間がかかってしまい行えていない。コントロールと比較して低温劣化に関して明らかな差を認めていないがオートクレーブ処理によって低温劣化が生じることまでは確認ができた。 学会での調査から、昨今では新しいタイプのジルコニア(高透光性ジルコニア)が市販され、結晶学的に異なることが予想され、今後の研究の参考になる知見を得られた。現在予定している実験群に加え、高透光性ジルコニアを用いることも検討している。 本年度に予定した実験群の予備試験まで到達しているが、試料作製に時間がかかってしまい、評価までの行えていないことや、予定した試験群について全て行えていないため計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果を踏まえ、ジルコニアの低温劣化を抑制する方法を引き続き検証する。予定していたジルコニア試料の低温劣化の抑制が期待通りいかない場合は高透光性ジルコニアを用いた低温劣化への影響を探索し、本年度の後半には棒状試料を用いた繰り返し荷重試験機を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ジルコニア試料作製、あるいは材料の評価が予定数終了しておらず、ジルコニアディスクの購入数が少ないため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越した差額でジルコニアディスクを購入し、未達成の試料作製に充てる。
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