研究課題/領域番号 |
16K20485
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
和田 淳一郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20611536)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 部分床義歯 / 発語機能 / 発語障害 |
研究実績の概要 |
昨年より研究成果をまとめていた,口腔容積と義歯装着による発語機能への影響の関連について論文をまとめ,国際誌(Folia Phoniatrica et Logopaedica)に投稿したところである.健常歯列を有する被験者に対し,実験的な中パラタルバーおよび前後パラタルバーを装着し,実験的大連結子非装着時の発語状況と比較し,どの程度不明瞭となるかを評価した.併せて,被験者の口腔容積,歯列弓の狭窄度,口蓋の高さを,3Dスキャナーを用いてデジタル計測し,①口蓋容積の前後比,②歯列弓の狭窄度,③口蓋の高さをパラメーターとして,発語機能の不明瞭度をアウトカムと設定して,①~③の影響を統計評価した.この結果,中パラタルバーの影響は,口腔形態にかかわらず低いが,前後パラタルバーを選択した場合,前方の容積比が小さい,歯列弓の狭窄度が強い,口蓋が高い,という条件で,発語機能の不明瞭度が有意に増加することが示された.以上より,この研究では,患者の口蓋の形態によって,義歯装着による発語機能への影響が変化することが示唆された.また,横断研究は引き続きデータサンプリングを進めている状況である.サンプリングの完了した被験者は昨年度同様に若干名であり,次年度以降,被験者数の増加を目指す.本課題は,義歯装着者の発語機能に関する主観的・客観的評価の横断調査である.併せて,下顎義歯の大連結子と発語機能の関係についてもデータ採取および論文作成中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
横断研究については,研究デザインの再考を行い,サンプリングに必要な時間・労力を短縮したものの,昨年同様被験者数は伸び悩んでいる.引き続き,データサンプリングを続ける.サンプリング予定期間を延長することも含め,今後の推進方策に記載した通りの対応で,引き続き研究を進める.横断研究以外の介入研究については,上顎大連結子による発語機能障害と口腔形態の関連について研究成果をまとめ,国際誌への投稿まで進めることができた.また,下顎大連結子のデザインが発語機能に及ぼす影響についても順次,論文作成を進める段階まで来ており,成果は確実に上がっていると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
基礎的介入研究(下顎大連結子のデザインの影響)については,現状の進捗状況は問題なく,引き続き成果をまとめる予定である.横断研究については,今年度同様,さらに評価項目の再考(拘束時間が理由で研究協力が得られない患者も散見されることから,データが一定数集まった時点で,統計解析を行い,義歯装着者の発語障害と関連が皆無と思われる評価項目については,削除を検討し,研究デザインを再考してよりシンプルなものとしていく)を考える.現在,投稿中の論文に関しては今年度の出版が見込まれる.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)初年度同様,実際の患者を対象とした横断調査の被験者数が伸び悩み,それに付随する経費の支出が抑えられたために当初の所要額に達しなかったと考えられる.また,学会参加も1回だったため,旅費等の経費も予定に達しなかった. (使用計画)次年度,被験者数が増え,研究経過がまとまることで,被験者の調査に必要な諸経費を今年度の予定に準じて支出することになる.また,平行して行っている介入研究は論文作成に差し掛かっており,英文校正および投稿費用などの諸費用を追加で捻出する必要があるため,前年度の繰り越し金を充てる予定である.
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