本課題で得られた知見は,①発語障害を避ける治療方針の立案,②治療前に予測される発語機能に関する情報の患者への提供,に対するエビデンスを提供するものである.口腔の前方が狭い,歯列弓の狭窄度が強い,口蓋が高い,という条件の患者の治療では,発語障害を生じやすい前後パラタルバーを可及的に避けるべきである.また咬合挙上を行う際に,咬合面を義歯床で被覆するスプリント型の義歯を用いる場合が少なくないが,治療中の発語障害の可能性,咬合面を被覆しない最終義歯を装着することで問題が解決することを理解いただくことで,患者が予期せぬトラブルを回避でき,安心して治療が受けられると考えられる.
|