成形修復用グラスアイオノマーセメント(GIC)は,硬化初期の機械的性質が十分でなく,長期耐久性が低いことが臨床的に問題となっている.これまでの研究で,硬化後のGICを塩化カルシウム溶液に浸漬することが硬化初期の表面硬さの改善に有効であることが明らかになった.しかし,その長期耐久性は明らかになっていない.そこで本研究は,表面強化した成形修復用GICの長期耐久性の解明を目的とし,カルシウム溶液に浸漬したGIC試料表面のビッカース硬さの測定を行った. 試料は,従来型GICまたはレジン添加型GICをアクリル製の窩洞に充填し硬化させて作製した.浸漬溶液には,高濃度の溶液として42.7 wt%塩化カルシウム水溶液と,低濃度の溶液として5%乳酸カルシウム水溶液を用いた.塩化カルシウム溶液に60分間浸漬した試料の表面硬さは,蒸留水に60分間浸漬した試料と比較して有意に大きな値を示した.その後,蒸留水に1週間浸漬した試料の表面硬さは,塩化カルシウム溶液浸漬試料と蒸留水浸漬試料で有意な差は認められなかった.塩化カルシウム溶液浸漬後の試料表面には,亀裂の発生が認められた.5%乳酸カルシウム溶液に1日~1週間浸漬した試料の表面硬さは,蒸留水に1日~1週間浸漬した試料と比較して大きな値を示したものの,有意な差は認められなかった.乳酸カルシウム溶液浸漬後の試料表面には,目立った亀裂の発生は認められなかった.試料表面の亀裂は,GICの長期耐久性に影響を及ぼすと考えられる.引き続き,表面強化したGICの長期的な機械的性質の変化を測定し,長期耐久性の解明を行う予定である.
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