研究課題
補綴・インプラント歯科治療において,安全かつ確実に骨欠損を再生する骨造成技術が求められている。申請者らは近年,個々の患者から作製可能なiPS 細胞が,新たな歯槽骨の再生医療技術として有用である可能性に着目してきた。一方,この技術を確立するための課題として,iPS 細胞の安全かつ確実な分化誘導法の確立および造成骨の骨吸収の抑制が挙げられる。本研究の目的は,ケミカルバイオロジーとナノオーダーのドラッグデリバリーシステム(DDS)を基盤とした,iPS 細胞に適した骨芽細胞分化誘導法を確立し,これにデジタルデザインを応用することにより,造成後における骨補填材の評価をも可能とする骨造成技術を開発することで,新たな実験モデルの確立,さらにはバイオエンジニアリングの確立につなげていくである.平成28年度は,新たなスクリーニングにより同定された小分子化合物が,iPS細胞および骨芽前駆細胞の分化および機能に及ぼす影響を分子生物学的手法を用いて多角的に評価した.その結果,通常の分化培養方法と比較して、骨芽細胞への分化をより促進的に作用することが明らかとなった。また、垂直的骨造成に用いるチタンメンブレンモールドをCAD/CAMを用いて作製し,このモールドおよび既存の骨補填材を用いて、ラット頭蓋骨欠損部における垂直的骨造成を行い骨再生を組織学的ならびにマイクロCTを用いて定量的に評価するモデルを確立することができた。
2: おおむね順調に進展している
これまでに同定した化合物が、骨芽細胞前駆細胞およびiPS細胞の骨芽細胞分化に促進的に作用するかを確認することができている。また、頭蓋骨欠損モデルによるiPS細胞の垂直的骨造成モデルの確立に必要なドーム型メンブレンもCAD/CAMシステムにより作成することができている。また、そのドーム型メンブレンおよび既存の骨補填材を用いてラットの頭蓋骨欠損部位に垂直的骨造成を行い、その有用性を確認することができている。
今後は、引き続き化合物およびDDS材料のiPS細胞における骨芽細胞分化の至適濃度をin vitro実験にて検討する。さらに、iPS細胞由来骨移植材の骨再生能を評価するため、垂直的骨造成モデル動物実験を確立し、骨欠損部における新規骨再生材料となり得る可能性を検証していく。
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Stem Cells Int.
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10.1155/2016/6240794