患者データベースより,当科で口腔インプラント治療を受けた現在年齢75歳以上の高齢者のうち1年以上来院が途絶えているものを対象に電話連絡し,要支援・要介護状態のインプラント患者の抽出を聞き取り調査にて開始した.また,岡山大学病院クラウンブリッジ補綴科関連病院にて訪問歯科治療を受けており,口腔内にインプラント体を有する65歳以上の要介護高齢者も対象に加えた.さらに,日本歯科大学との共同研究が実現したため,日本歯科大学付属病院口腔インプラント診療科で口腔インプラント治療を受けた75歳以上の患者のうち,要介護認定を受けている高齢者,および日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックにて訪問歯科治療を受けており,口腔内にインプラント体を有する65歳以上の要介護高齢者も対象に加えた.現在までに,15名から研究協力の同意が得られ,検診を行った.研究実施対象者には臨床診査プロトコルに従い,口腔衛生状態,インプラント体周囲の炎症・骨吸収,上部構造のトラブルの有無などの臨床診査データの収集を行うとともに,聞き取り調査により栄養摂取状況,日常生活動作の状況,全身状態,介護環境などの把握を行った.対象者15名(平均年齢:80.7歳,男/女:7/8名,要支援1/要支援2/要介護1/要介護2/要介護3/要介護4/要介護5:2/2/4/1/1/5/0名)のうち,14名は調査時点でインプラント部のトラブルを認めず,1名はインプラント体が破折していたが,すでに可撤性義歯による再補綴処置を受けていた.総インプラント体47本中,24本に4mm以上の深いプロービング値を認めたが,インプラント体周囲の腫脹,発赤を認めたものは2本で,排膿を認めたものは1本のみであった.対象者の要介護度別にインプラント部の4mm以上のプロービング値の割合を算出したところ,要介護度による違いはない可能性が示唆された.
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