高齢化が進む我が国で国民が要支援となる主要な原因である変形性関節症 (OA) はいまだ発生原因が明らかとなっておらず,その原因遺伝子のひとつであると推測されているWISP1 遺伝子に着目し,変形性関節症の発症ならびに病態への関わりを解明することを目的とした. 過去の報告よりWISP1はBMPが属するTGF-βファミリーを制御していること,OA患者の軟骨組織においてBMPとそのアンタゴニストの発現が亢進することが知られているため,今回軟骨細胞分化過程におけるWISP1とBMP-2のネガティブ・フィードバック機構との関連を検討した. ヒト間葉系幹細胞 (hBMSCs) を100 ng/ml BMP-2含有軟骨細胞分化培地で4週間pellet培養し,BMPアンタゴニストの経時的な遺伝子発現パターンを定量性RT-PCR法にて解析したところ,NOG,CHORD,GREM1の遺伝子発現量は培養時間の経過と共に有意に上昇した. Sebaldらが作製したBMPアンタゴニストの機能阻害剤L51P (BMPアンタゴニストへの結合能は有するがⅠ型BMP受容体への結合能が低下したBMP変異体) を用い,軟骨細胞分化過程におけるBMPアンタゴニスト阻害実験をhBMSCsのpellet培養法にて行ったところ,培養3週間後にBMP-2/L51P共刺激群において軟骨細胞分化マーカーであるCOL2A1,ACANの遺伝子発現が有意に上昇した. 以上より,軟骨細胞分化過程においてもBMPネガティブ・フィードバック機構が働き,軟骨細胞の分化と共に発現が上昇するBMPアンタゴニストにより軟骨細胞分化が制御されていることが示唆された.
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