研究実績の概要 |
本研究では,変形性関節症 (OA) の原因遺伝子のひとつであると推測されているWISP1遺伝子が変形性関節症の発症ならびに病態への関わりを解明することを目的に,前年度までに過去の報告よりWISP1はBMPが属するTGF-βファミリーを制御していること,OA患者の軟骨組織においてBMPとそのアンタゴニストの発現が亢進することに着目し,軟骨細胞分化過程におけるWISP1とBMP-2のネガティブ・フィードバック機構との関連を検討したところ,軟骨細胞分化過程においてもBMPネガティブ・フィードバック機構が働き,軟骨細胞の分化と共に発現が上昇するBMPアンタゴニストにより軟骨細胞分化が制御されていることが示唆された. 今年度は更に軟骨細胞分化におけるBMPアンタゴニストの役割を解明するため,まずレチノイン酸刺激によるOAモデル軟骨細胞を作製した.マウス大腿骨より採取した間葉系幹細胞 (mBMSCs) をレチノイン酸含有培地 (1, 3, 10 μM) で3日間培養したところ,レチノイン酸濃度依存的に軟骨細胞分化マーカー (Col2a1, Acan) の遺伝子発現量は低下した.このレチノイン酸誘導性OAモデル軟骨細胞では,レチノイン酸刺激によりBMPアンタゴニスト (Nog, Chord) の遺伝子発現量の上昇を認め,同時に軟骨細胞分化マーカーの遺伝子発現量は低下したが,Sebaldらが作製したBMPアンタゴニストの機能阻害剤L51P (BMPアンタゴニストへの結合能は有するがⅠ型BMP受容体への結合能が低下したBMP変異体) を更に添加すると,レチノイン酸刺激により発現が低下したCol2a1やAcanは,統計学的有意差は認めなかったものの回復傾向を示した.これより,軟骨の修復や維持にBMP-2と共に,BMPアンタゴニストが深く関与していることが示唆された.
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