ベッドサイドや在宅環境でも容易に測定できる新たな口腔機能評価法として、吸引・嚥下時の口腔内圧変化に着目し、測定装置の作製及び測定方法の検討を行っている。試作した口腔内圧測定装置を用いて、成人女性114名および高齢者男性65名の最大吸引力を測定した結果、若年者女性群-37.9±13.0kPa、高齢者女性群-32.2±11.7kPa、高齢者男性群-16.03±6.4kPaであり、再現性は良好であった。しかし、個人差が大きく、特に高齢者男性の最大吸引力の測定時には、プローブであるチューブの吸引方法に戸惑う様子がみられ、最大吸引時の計測が行えていない可能性が考えられる。今後、各年代の基準値の設定を行うためには、さらに多数のサンプルを取得するとともに、チューブの太さや形状を再検討し、測定方法についても改良を行うことが必要である。 また、装置の利便性を高めるために、呉工業高等専門学校電気情報工学科と協力し、既存の口腔内圧測定装置にかわる小型で安価な測定装置の試作を実施した。1回目の試作装置の改善点として、ディスプレイサイズを大きくすること、ADコンバータを高ビット化すること等が挙げられた。そこで、第2回試作装置では、外部デジタル信号によりSPIインターフェースで1倍から128倍のゲイン調整が可能なPGA(PGA112)を使用し、ADコンバータは12[bit]のADコンバータに変更した。メモリについては128[kbyte]の容量を持つSRAM(読み書きを自由に行える揮発性の半導体メモリ)を外付けし、ディスプレイは3.2インチのディスプレイを使用した。試作装置を用いてPGA出力評価、ノイズ評価、 応答特性の評価を行ったところ、正しく測定され、吸引・嚥下時の口腔内圧力測定に必要な性能を満たしていると考えられた。しかし、実用化に向けてはさらなる動作確認および改善が必要である。
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