研究課題/領域番号 |
16K20503
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
牧原 勇介 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (40760418)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / インプラント / 連通多孔性ハイドロキシアパタイト |
研究実績の概要 |
糖尿病において破骨細胞が活性化し骨吸収が亢進し骨塩量は減少する。骨リモデリング制御型人工骨の持つ骨芽細胞活性化および,破骨細胞活性抑制機能は,糖尿病におけるバランスが崩れた骨代謝環境を正常な状態に導き,骨のリモデリングを制御可能にし,糖尿病患者においてもより予知性の高いインプラント治療が確立できるのではないかと考えた。そのため,まずは,骨リモデリング制御型人工骨の物理的な骨強度の検討を行い,その後,骨形成およびインプラント支持の検討を行う研究計画を立案し,実行した。 平成28年度は骨リモデリング制御型人工骨を糖尿病モデルラビットに応用し,その物性を測定し(圧縮試験およびPush-out試験),骨強度を検討した。まずは,円柱状連通多孔性ハイドロキシアパタイトに短鎖・中鎖型ポリリン酸を吸着させた骨リモデリング制御型人工骨を作製した。その後,偽手術(アロキサン,グルコース溶液の代わりに生理的食塩水を同量投与)を施したラビットに埋入し,移植材としての骨強度を検討した。また,コントロールとして連通多孔性ハイドロキシアパタイトを反対側の大腿骨に埋入した。その結果,骨リモデリング制御型人工骨はコントロールと比較し高い強度を示した。それらの結果を加味し,糖尿病モデルラビットに吸着させるポリリン酸の濃度等を調整した骨リモデリング制御型人工骨を応用したところ,埋入より2週後ではコントロールと比較し強度に差はなかったものの,埋入より4週後においてコントロールと比較し高い強度を示す傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に計画していた糖尿病モデルラビットの作成および,骨リモデリング制御型人工骨による骨質改善部位の骨強度評価(圧縮試験,Push-out試験)はおおむね良好な結果が得られたため,次年度のインプラント骨支持の評価に進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
アロキサンの尾静脈投与におよび,皮下に5%グルコース溶液を1週間継続的に投与し,高血糖Ⅰ型糖尿病モデルを作成し,作成中はアロキサン投与量やグルコースの濃度などを考慮し血糖値および体重を測定により経時的に観察を行う。作製した半数の群にインシュリンを投与する(インシュリン投与群)。その後,骨窩を作製し,片側にテスト群として骨リモデリング制御型人工骨を反対側にコントロール群として連通多孔性ハイドロキシアパタイトを埋入する。埋入から2Wおよび4Wで組織ブロックを採取し,マイクロCT撮影後,脱灰標本を作製する。移植材の強度評価として①圧縮試験②Push-out試験を行い,骨強度を評価する。骨リモデリング制御型人工骨の物理的な強度を確認した後,骨リモデリング制御型人工骨による骨再建部位にインプラントを埋入し,埋入トルク値およびISQ 値を測定し初期固定の評価を行う。また,インプラント支持能の評価としてμCT 撮影後,インプラントの引き抜き試験にて,逆トルク値を測定。骨組織を採取し,へマトキシリンエオジン染色ならびにTRAP 染色にて組織学的,組織形態計測学的に評価を行い,糖尿病を有する骨欠損に対するインプラント治療のための「骨リモデリング制御型人工骨による骨再生療法」の有用性を明らかとする計画である。
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