本年度は、炭酸アパタイトセメントの骨材となる、炭酸アパタイト顆粒の作製及び、その最適化を行った。炭酸アパタイト顆粒は、ある程度のサイズを持った前駆体である易溶性のカルシウムを含むセラミックスを、リン酸及び、炭酸溶液に浸漬して作製する。前駆体として、酸性リン酸カルシウムであるDCPD及び、MCPMを使用した。これらを、炭酸溶液下で水熱処理することにより、炭酸アパタイトを作製することを試みた。高濃度の炭酸溶液下にて、DCPD及び、MCPMを処理すると、炭酸アパタイトが形成することを確認した。さらに、形成した炭酸アパタイトは、前駆体であるDCPD及び、MCPMの結晶形態を維持したままであることが分かった。形成した炭酸アパタイトは、数十ナノメートルサイズの炭酸アパタイト結晶が、緻密に集積した構造をしていることも分かった。この内容については、1報の原著論文として、すでに掲載済みである。 今後は、DCPD及び、MCPMを顆粒化し、炭酸アパタイトに組成変換させ、その有用性を動物に埋入することで、評価を行っていく。 これと並行して、生体に埋入時に粘着性を示し、止血性が期待できるゲルについて、検討を行った。ゲルには、予め炭酸アパタイトを練和し、生体親和性、剛性を高めることを試みた。PLLAなど、すでに細胞遮断膜として実用化されているポリマーは、生体親和性があり、さらに生体吸収性であるが、一方で、剛性を示し、また、水に溶けにくいため、使用が困難である。そこで、アルギン酸ナトリウム、PEGなどのより柔軟性に富むポリマーを利用することを検討した。混錬機で、混錬することで、ポリマーと炭酸アパタイトを均一に混錬することが出来た。
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