本年度は、昨年度までに調製法を確立した炭酸アパタイト骨材を利用した骨セメントの有用性を検証した。昨年度末に行った検討において、リン酸八カルシウム(OCP)ブロックから組成変換にて調製した炭酸アパタイトブロックは、優れた機械的強度を持つことが分かった。このため、OCPブロックから調製した炭酸アパタイトブロックをセメント骨材とした。 セメント骨材の硬化時間について検討した。セメント液剤として、アルギン酸ナトリウム溶液と、ポリアクリル酸溶液を利用した。これらを混水比3~5にて炭酸アパタイトブロックを粉砕した炭酸アパタイト顆粒と混合すると十分な強度を持つ硬化体が得られた。また、顆粒間は膜状の硬化したアルギン酸、ポリアクリル酸硬化体によって封鎖されていた。シリンジに詰めて生理食塩水の通過性を確認したところ、30分程度までは生理食塩水の通過を確認できず、止血性があることが示唆された。1時間以上生理食塩水に浸漬すると、膜状の構造は崩壊し、炭酸アパタイト顆粒のみとなることが分かり、本セメントのコンセプトが実証できた。 実験動物による評価を行った。骨セメントについては、OCPブロックから調製した炭酸アパタイトを用いている。このため、まず残存することが危惧されるOCPについて生体親和性を評価した。OCPブロックをウサギ骨欠損部に埋入し、生体親和性を評価した。本ブロックは、非常に高い生体親和性を示すことが分かった。この成果を英語原著論文としてまとめたところ、表紙に選ばれた。
|