歯科インプラント治療において、インプラントを埋入するための十分な骨量(高さと幅)は治療の成功のための重要な要素である。一方で、歯を喪失した後の顎骨は吸収してしまっていることも多く、対応に苦慮することも稀ではない。このような流れの中で、歯科インプラント治療の際に骨増生処置を行うことで骨の高さや幅を獲得する術式が広く用いられている。骨増生処置には自家骨がゴールドスタンダードであるとされているが、採取量に制限があり、採取部位に外科的侵襲が避けられない、などの問題点もあり、理想的な人工材料の開発が望まれる。また、骨増生処置に関連する合併症として軟組織の裂開やそれに伴う感染などが報告されている。そこで本研究では、軟組織の治癒、感染予防に着目し、新規骨補填材料の開発を行うこととした。骨補填材料としては生体骨の組成に近い炭酸アパタイトを用いた。脂質異常症治療薬として広く使用されているスタチン系薬剤に骨形成促進効果があることは従来より報告されてきたが、近年、軟組織治癒促進効果に関しても有効性を示唆する報告が見られるようになってきた。そこで本研究では炭酸アパタイトにスタチンを組み合わせることでその有効性を示すため研究を行い、一定の成果を得た。
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