現在一般的に市販されている義歯安定剤の問題点の1つと考えられる強すぎる粘着力や誤嚥性肺炎の主要原因菌種であるC.albicansに着目し、抗真菌性および易除去性を有する義歯安定剤の開発を目的とした。最終年度の計画では、抗真菌性を有するラクトフェリンを試作義歯安定剤にさまざまな割合で添加し、最適な濃度を決定することであったが、試作義歯安定剤の構成成分比や粉液比の決定が想定よりも困難であったため、前年度から継続して構成成分、粉液比の物性に及ぼす影響について詳細に検討を行った。また当初の計画にはなかったが、操作性についても評価を行った。 義歯安定剤に一般的に使用されている水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)およびメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体(PVM-MA)を用いて、さまざまな含有量の試料を、さまざまな粉液比で作製し、粘度、接合力および操作性に及ぼす影響について検討を行った。粘度は材料の広がりやすさを、接合力は義歯との粘着性を表している。 結果は、粘度および接合力についてはCMC-Naの割合が高く、粉液比が大きいほど高くなる傾向を認めた。このうち接合力については粘度が高くなると大きな増加率を認めなくなることが明らかとなった。操作性については歯科医師の手指感覚により最適と思われる粘度の評価を行ったが、100Pa・s前後の粘度が適切であるという結果であった。 以上の得られた結果については国内の学会のみならず、海外での学会でも発表を行い、その成果を国内外に発信した。
|