研究実績の概要 |
歯科補綴臨床において、歯の喪失に起因する顎骨の欠損や移植骨の術後吸収は、義歯やインプラントによる治療をしばしば困難にするが、絶えずリモデリングする骨における骨吸収亢進のメカニズムは未だ解明途上にある。本研究により、骨細胞が骨に加わるメカニカルストレスを細胞内や細胞間シグナルに変換し、そのリモデリングをコントロールする機序の一端の解明を目的とした。 骨細胞は、長期の培養が可能で骨細胞として複数の分化段階を発現する株化細胞IDG-SW3および長期の実験には適さないものの実際にマウス長管骨内に存在する骨細胞を抽出したプライマリー細胞を用いた。 IDG-SW3は、増殖培地(INF-γを含む)を用いて33℃インキュベータ内で培養.実験開始には2日でコンフルエントになるよう播種。コンフルエントに達したら分化培地(INF-γを含まず、 50 μg/ml ビタミンCおよび4mM βグリセロリン酸を含む)に交換して37℃のインキュベータに移して培養。細胞の分化を、Day3~4でDmp-1の発現とともにGFPが発現することで、顕微鏡下で観察確認した。さらにDay 10~14で強い発現を確認。2~3日ごとに培地交換し、0日および3,7,10,14,21,35日でのN=3でのサンプルを回収し、回収した細胞よりtotal RNAおよびtotal proteinを抽出した。 一方、プライマリー細胞は、トランスジェニックによりDmp-1とGFPが同時に発現するマウスより大腿骨および脛骨を回収。培地内で骨を分割し、コラゲナーゼおよび EDTAを含む培地にシェーカーにかけながら交互に浸漬して細胞を抽出。抽出した細胞は4日間静置後に培地交換してから実験に使用した。 現在まで細胞の安定した抽出および培養に時間を要してきたが、人工無重力装置による実験に着手しており、実験結果を検討中である。
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