研究実績の概要 |
これまで微小重力環境での科学実験は、主に宇宙空間で行われてきた。ところが、最近、人工微小重力装置Graviteが開発され、地球上の1G環境においても微小重力環境による様々な実験が可能になってきた。微小重力環境では、骨組織は様々影響を受けることが知られており、中でも骨細胞は、そのメカノセンサーとしての役割が明らかになりつつあるものの、そのメカニズムにはいまだ解明の余地がある。 本研究は、初期の骨芽細胞から成熟骨細胞まで、複数の分化段階を示す特徴のある株化骨細胞IDG-SW3を、人工微小重力装置Graviteを用いて培養することで、骨細胞が重力環境の違いでどのような影響を受けるかについて、 in vitroで観察することができるのではないかと考え、微小重力環境下での培養実験が可能かどうか検討してみることとした。 1x106で凍結したIDG-SW3を通法に従い解凍し、増殖培地(α-MEM, 10% FBS, 100U/ml penicillin, 50μg/ml streptomycin, 50U/ml INF-γ)中で、コラーゲンコートしたベントキャップ付き12.5T培養フラスコ(FALCON社)に播種し、5% CO2、33℃環境下にて12時間培養し、細胞のフラスコへの接着を確認した。培地を、分化培地(INF-γを含まず、50 μg/ml ビタミンCおよび4mM βグリセロリン酸を含む)に交換し、コントロールはインキュベータ内に平置し、実験群はGraviteに搭載して、5% CO2、37℃環境下にて培養した。12時間ごとにGraviteを停止させて顕微鏡下で細胞を観察しながら48時間継続して培養した。 細胞は、12時間、24時間、36時間、48時間後のいずれの時間経過においても、コントロールおよび実験群ともにフラスコに接着しており、細胞の生存に差異は認めなかった。
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