本実験の目的は、無歯顎患者にジルコニア床義歯と金属床義歯それぞれを装着させ、装着時の感覚や細菌の付着性を比較することにより、ジルコニア床義歯の有用性を明らかにすることである。 評価項目は①VASによる主観的評価、②細菌付着程度の評価であり、①はジルコニア床義歯とコバルトクロム床義歯をランダムに6ヵ月ずつ装着させ、装着時、装着3ヵ月後、6か月後にVASの評価用紙にて評価させた。②は装着3ヵ月後、6ヵ月後に、1)義歯床の研磨面および粘膜面をスワブし、総嫌気性菌数・カンジダ菌数の計測、2)舌苔の付着程度の計測、3)口腔乾燥程度(唾液量、口腔粘膜の水分量)の計測を行った。 被験者10名に対して義歯を製作し評価を行ったが、8名の被験者が計測途中で来院しなくなったため、当初予定していたデータの採取が不可能となった。 そこで、ジルコニア義歯の有用性を検討するために、義歯床粘膜面の材質の違いによる食品付着性を検討することとし、アクリルレジン、コバルトクロム合金、ジルコニア、シリコーン系軟質裏装材およびアクリル系軟質裏装材への食品(チューイングガム)の付着性の検討を行った。実験の結果、ジルコニアは乾燥状態、湿潤状態どちらの場合でも食品が付着しにくい材料であることが明らかとなった。本研究結果は、「Comparison of adhesiveness of chewing gum to hard and soft denture base materials」というタイトルで、Journal of Prosthodontic Reserachへ投稿し、アクセプトされた。
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