研究課題
急速に超高齢化が進む我が国では口腔常在菌と全身疾患の関連が注目され，口腔ケアの重要性に対する認識の高まりから歯の喪失率は減少傾向を示しているものの，未だ高齢者の多くが義歯を使用しており，そのケアが必ずしも行き届いていないのが現状である．高齢者や要介護者は慢性疾患の罹患率が極めて高く，日和見感染により難治性感染症を惹起することがあり，口腔に常在する細菌による呼吸器感染症もこれにあたる．我々の研究室では，歯質ならびに修復物や補綴装置表面の表面自由エネルギーを低下させ，かつ耐酸性を付与することができる種々な表面改質剤を開発し，プラークの付着，形成ならびに歯質の脱灰を抑制して齲蝕および歯周疾患を予防することを目的とした研究を進め，その成果を報告してきた．本研究ではこの技術を応用し，歯面や修復物，さらには義歯床などの補綴装置表面に塗布，あるいは高分子材料に添加して抗菌効果をもたせることによりプラークの付着を抑制して，高齢者のみならず国民の口腔健康を改善，および増進することに寄与することである．本年度は，新規合成した第4級アンモニウム塩の構造を有する抗菌性シランカップリング剤N-allyl-N-decyl-N-methyl-N-trimethoxysilylpropyl- ammonium iodide（以下10-I）を添加した新たな抗菌性高分子材料の開発を目的とし，10-Iを既存の歯科材料表面に添加し，カンジダ菌に対する抗菌効果の有無を抗菌活性により検討・評価を行った．その結果，10-Iを添加した群は，対照群（無添加）と比較して生菌数が有意に低い値を示した(p<0.05)．したがって，10-Iを既存の歯科材料に添加することにより義歯性口内炎の予防のみならず，誤嚥性肺炎などの全身疾患の併発の抑制，あるいは予防効果が発揮されることが示唆された．
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (13件)
Journal of Dental Health, Oral Disorders & Therapy
巻: 7 ページ: 246-249
10.15406/jdhodt.2017.07.00246
Journal of materials Science and Engineering B.
巻: 7 ページ: 99-106
10.17265/2161-6221/2017.5-6.002
International Journal of Current research．
巻: 9 ページ: 57249-57253
日本歯科理工学会誌
巻: 36 ページ: 453-459
https://doi.org/10.18939/jsdmd.36.6_453
巻: 36 ページ: 460-469
https://doi.org/10.18939/jsdmd.36.6_460
International Journal of Development Research
巻: 7 ページ: 16711-16716
Jouranl of Oral Science
巻: 60 ページ: 129-136
https://doi.org/10.2334/josnusd.16-0758Jouranl of Oral Science
