本研究の目的は「超小型・軽量の高周波超音波測定装置を開発し,歯周およびインプラント周囲粘膜の厚みを非侵襲的に測定すること」と「デジタルオーラルスキャナーと高周波超音波測定装置を融合した光学・超音波機器を開発し,現状では印象困難な天然歯の支台歯の歯肉縁下領域の印象精度を向上させること」であった.まず,1つめの超音波による口腔粘膜の厚みを測定することは,小型超音波プローブを開発し達成することができた.また精度ついても実際に組織切片を作成し測定した実測値と同等の精度を示した.この成果は,日本口腔インプラント学会学術大会で口頭発表をおこなった.日本において,超音波を印象に応用した研究は初の試みであり,大変意義のあることだと考えている. 超音波による粘膜の厚み測定が可能となったことで,口腔内スキャナの欠点である歯肉縁下にあるクラウンマージンの描記の可能性が示唆され,開発を試みた.しかしながら,歯肉縁下のマージンを連続的に描記するためには,プローブの集合体を製作する必要があり,技術的には可能なものの予算的な問題から断念せざるを得なかった.そこで,デジタルを利用した歯科,特にインプラント・補綴領域への応用を目指し,口腔内スキャナによるインプラントの印象精度の検証やVRを用いたインプラント手術などについて研究を行い,先述したインプラント学会での口頭発表をおこなった.VRを用いたインプラント手術は世界初の試みであり非常に反響が高かった.今後も継続してデジタルの歯科への応用について研究および臨床応用をしていく予定である.
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