研究実績の概要 |
ナノジルコニア(パナソニックデンタル社製)を使用し表面を機械研磨したものを対照群,室温で濃アルカリ処理を行ったナノジルコニア板を実験群として使用した.表面解析としてSEM,SPM,XPSを用いた表面解析および蒸留水の接触角を測定した.また,培養開始1, 3, 6, 24時間後のウシ血清アルブミンの吸着量について比較・検討した.次に,生後7週齢のSD系雄性ラットの両側大腿骨から骨髄間葉細胞を採取後,初代培養を確立しその3代目を実験に供した.培養開始1,3,6,24時間の各群における細胞接着数の比較、培養後14,21日後のALP活性および21, 28日後のオステオカルシンの産生量およびカルシウムの析出量を測定した.また,各種培養後の細胞より逆転写後得られたmRNAより分化誘導に関する遺伝子マーカーの発現について検討した.統計学的解析には,各測定値にStudentのt検定を用い,有意水準は5 %に設定した.SEMの観察では,ナノジルコニア板には変化はなかったもののSPMの解析では実験群でRaの上昇を認めた.XPSの観察では実験群でCのピークの減少および水酸化物の形成を認めた.実験群で親水性を示すことが明らかとなった.また,全ての計測時間でウシ血清アルブミンの吸着,骨髄細胞の初期接着,各種分化誘導マーカーおよび遺伝子マーカーの発現が対照群と比較して実験群で高い値を示した.以上の結果により,ナノジルコニア板へ濃アルカリ処理を施すことが,材料表面を機械的および化学的な相互依存的変化させることにより,ラット骨髄細胞の初期接着および分化誘導の向上に有用であることの一端が明らかとなった。
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