本研究の目的は超音波診断装置を用いて咀嚼および嚥下時の舌運動の観察を行うと同時に嚥下内視鏡を用いて咽頭部における食塊移送の関連性を解明することであった.2018年度は過去2年間の研究成果を解析と一部追加実験を行い,本研究の総まとめを行った. まず初めに,摂食嚥下時の舌運動の観察記録を行い,その動態について検討するための研究を行った.本研究の被験者は10名の健常有歯顎者であった.超音波画像検査はBモードとMモードを用いて咀嚼から嚥下に至るまでの一連の舌運動を観察した.被験運動は自由咀嚼と自由嚥下を指示した.被験食品として咀嚼の訓練食品である咀嚼開始食品(プロセスリード,大塚製薬工場)を用いて,一定条件下での咀嚼時舌運動の超音波画像検査を用いた評価法を確立することが出来た.この結果から,咀嚼から嚥下の一連の動作において,嚥下時にはまず舌の挙上運動が認められること,その後,嚥下内視鏡の検査画面上でホワイトアウトが認められ,ホワイトアウトの終了,舌の挙上の解除が行われることが明らかとなった.咀嚼から嚥下に連続する場面において,舌の挙上運動は口腔と咽頭の遮断を示している.また,嚥下内視鏡検査で観察されるホワイトアウトは中咽頭部の収縮を示している. 次に,検査法としての信頼性を確認するために,舌運動の超音波画像検査の読影における級内相関係数を用いて検討を行った.その結果,咀嚼および嚥下時のいずれにおいても,本検査法の検者間信頼性は高いことが示された. 一方,当初の研究計画では可撤性義歯使用者についても詳細に比較検討する予定であったが,被験者数が十分集まらなかったこと,新しい検査法であることからその信頼性の検討が必要であったことなどから,可撤性義歯使用者についての検討は見送った. しかし,本研究によって摂食嚥下時の一連の舌運動について超音波画像検査の実用性が示された.
|